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国・文化が異なれば、自然の観光資源に対する見方も異なる~自然スポットを外国人観光客に紹介する際の留意点~

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H. Oikawa

インバウンドマーケティング事業部の追川です。

以前、弊社エディターのキャサリンが作成したブログ記事、「Please, Don’t Write about the Four Seasons ― 「四季」を強調する観光マーケティングの問題点」に、多くのアクセスをいただきました。
今回はその続編となります。キャサリンは、これまで観光庁の「地域観光資源の多言語解説整備支援事業」で、日本各地の国立公園の英語解説文を執筆・編集してきました。彼女の経験を踏まえ、外国人観光客が国立公園に対して抱くイメージについて、記事にまとめました。

観光資源としての国立公園の活用

2016年3月、観光先進国となることを目標として「明日の日本を支える観光ビジョン」が日本政府によって発表されました。その中で観光をより発展させていくための柱の一つとして、国立公園を観光資源として積極的に活用していく方針が示されました。
これを契機に、環境省による「国立公園満喫プロジェクト」が始まり、訪日外国人観光客を国立公園に誘客する取り組みが本格化しました。環境省によると、プロジェクト開始前の2015年には約490万人だった国立公園の訪日外国人利用者数は、コロナ前の2019年には約667万人に増加しました。
環境省_国立公園満喫プロジェクトより)

国立公園の歴史・定義

環境省によると、世界初の国立公園はアメリカのイエローストーン国立公園(1872年に指定)で、日本では明治の終わりころから指定の機運が高まり、昭和9年(1934年)に瀬戸内海、雲仙、霧島の3ヵ所が日本初の国立公園に指定されました。国立公園の定義は「日本を代表するすぐれた自然の風景地を保護するために開発等の人為を制限するとともに、風景の観賞などの自然に親しむ利用がし易いように、必要な情報の提供や利用施設を整備しているところ」とされています。

この定義を読むと、国立公園=公園内豊かな自然が広がり、人間社会とは一定の距離が保たれた区域というイメージを抱く方も多いのではないかと思います。

大自然が広がる国立公園のイメージ
定義から連想される国立公園は、このようにひたすら大自然が広がっているイメージ

日本の国立公園は、実は「自然だけ」を楽しむ場所ではない?

キャサリンによれば、彼女の出身国であるアメリカの国立公園はまさに上の写真のイメージの通りで、国立公園内には人が住むことができず、ただひたすら大自然のみが広がっている光景を連想するといいます。彼女は、日本の国立公園にも同じような風景が広がっているのだろうと考えていました。しかし、上述の観光庁事業のために実際に日本の国立公園を訪れたところ、公園内には人が生活し、社会が存在していました。
アメリカ以外でも、たとえばアフリカの国立公園などと聞くと、たいていの人々は果てしなく続く荒野にライオンやシマウマなどが生活している光景を思い浮かべます。人間社会と自然が共存している日本の国立公園は、世界の中でもかなりユニークな例だと感じたといいます。

多くの人が連想するであろう、人間社会とは切り離されたアフリカの国立公園のイメージ写真
多くの人が連想するであろう、人間社会とは切り離されたアフリカの国立公園のイメージ
竹富島の写真
住民が暮らしているが、島全体が西表石垣国立公園の一部となっている竹富島

そこで、日本の国立公園を外国人観光客に向けて紹介する際は、上記のような違いを十分に考慮することが必要と考えました。具体的には下記の3点です。

1. 「人と自然の共生」について丁寧に説明する

自然保護区にも関わらず人が暮らしているという事実は、外国人にネガティブな印象を与える可能性があります。なぜなら、先ほども説明したように、多くの外国人は「国立公園=手つかずの自然」という固定観念を持っているためです。

しかし、日本の国立公園は古来から人と自然が共生してきた場所であり、お互いに持ちつ持たれつの関係を維持してきたことで、むしろ互いの存在を今まで保護してきたという歴史を持っています。またそれぞれの環境に合わせた独自の文化や風習が育まれてきましたが、それらは必ずしも自然環境を破壊するものではありませんでした(例:当ブログ「令和2年度、観光庁多言語事業の「優良解説文」に選定されました。」より、『大山隠岐国立公園「蒜山の草原:蒜山の山焼き」』)。

「人が住む=自然が破壊される」とは限らないという点を丁寧に解説することが、外国人観光客にとっては特に大切であると考えます。

2. 文化と自然の両面をバランスよく紹介する

日本の国立公園には、受け継がれてきた地域の文化と、文化を楽しむアクティビティーがあります。このような文化を外国人観光客に理解してもらい、国立公園を楽しんでもらうことももちろん大事です。
しかし、アピールポイントを文化面に置きすぎてしまうと、自然面の魅力の発信が欠けてしまいます

遠方から国立公園に足を運ぶ外国人観光客は、まずは自然を楽しみたいという思いを持っています。そのため、文化と自然の両方をバランスよく紹介していくことが大事であると考えます。

3. 「人気No.1!」という売り文句の罠

お店などに行くと、「売上ランキング第一位!」や「人気No.1!」などというポップを必ずと言っていいほど目にします。観光情報サイトなどでも同様に、「このスポットは観光客人気No.1!」や、最近だと「インスタ映え間違いなし!」などという宣伝文句をよく見かけます。
観光客側としても、数ある見どころの中から行きたい場所を絞る時には、こういったわかりやすい売り文句があった方が助かることがあります。

しかし国立公園をはじめとした自然が魅力の場所においては必ずしもこの限りではありません。
なぜなら、そのような場所に足を運ぶ観光客のなかには、都市の人混みや喧騒とは真逆の環境を求めている観光客も多くいるためです。
そのため、人気No.1というキャッチコピーが付けられていることによって混雑しているような場所は、かえって敬遠されてしまう可能性があります。

人気が高いスポットやアトラクションを紹介する場合でも、「人気があります」という表現を使わず、あくまでそこにどんな魅力があるのかを語る方が、よりその場所の魅力が伝わると考えます。

混雑するビーチの写真
自然観光資源において、「人気No.1!」は必ずしもプラスの売り文句にはならない可能性がある(画像:DW「Thailand: Saving a beach paradise from mass tourism」より)

以上、日本の国立公園を外国人観光客に紹介する際の留意点をご紹介しました。

このように自然の観光資源に対する捉え方も、国・文化によって様々です。多言語化に際しては、その言語のネイティブの視点を取り入れるとより訴求力の高い解説文を制作できると考えています。

多言語化に関するご相談などがございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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