外国人に分かりやすい多言語解説文とは 〜文章の構成①〜

ローカライゼーション
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S. Sato

2022年02月04日

弊社は、2018年度より観光庁の多言語解説整備支援事業に参画し、
これまでの4年間で計53地域の文化財、国立公園、観光・食文化の英語解説文を手掛けてきました。

ネイティブライターは観光庁の専門人材リストに登録されており、
文化財、自然、観光、それぞれの分野に特化した人材を起用しています。

観光庁事業の英語解説文は、原文に忠実な翻訳ではなく、ネイティブのライターが現地を取材し、
外国人にとって読み慣れた文章スタイルでゼロから作成しています。

読み慣れた文章スタイルとは

文化財や国立公園などの日本語解説文は、専門用語を交えながら、事実を客観的に記載するのが一般的ですが、
英語はストーリーを語りながら、読者の疑問に応えるようなスタイルが主流です。

文章の構成も大切

読み慣れた文章スタイルにするだけではなく、読み慣れた「文章の構成」にすることも大切です。
英語圏では、文章の構成がおおよそ決まっています。

例えば、観光施設を紹介する際は、一般的に下記のような構成になります。


(1)関心を引き起こす「リード文」

(2)一般情報(What・Where・When)

(3)2番目で紹介したテーマを掘り下げる

(4)情報のまとめ

(5)アクセス情報など(もしあれば)

対象物にもよりますが、基本的に、冒頭には読み手の興味を惹く内容を紹介します。
冒頭のリード文を読んで「面白そうだね。じゃあ、行ってみようか!」と感じてもらい、
最後にアクセスやアクセシビリティ情報を紹介し、外国人旅行者に現地を訪れてもらえるように促します。

次にエディターのキャサリンより、弊社で作成した英語解説文を例に「文章の構成」をご紹介します。


catherine's profile

秩父市の解説文:「氷柱会場」の例

担当ライター / キャサリン・ターリー

これからご紹介する解説文は、2つのパートで構成されています:

秩父の「氷柱会場に関する概要(序章)」と、
「各氷柱会場を説明する3つのサブセクション」に分かれています。

なお、この解説文は、秩父地域おもてなし観光公社様のホームページに掲載されています。

秩父地域おもてなし観光公社(Chichibu Guide)様に掲載されている20点すべての解説文は、
キャサリンがライティング、ブレンダンがエディティングを手掛けました。

下記の文章は、構成ごとに色分けしています:

(1)関心を引き起こす「リード文」/(2)一般情報(What・Where・When)

(3)2番目で紹介したテーマを掘り下げる /(4)情報のまとめ /(5)アクセス情報など

●パート1:氷柱会場に関する概要(序章)

Icescape Parks(英文)

Every winter, three of Chichibu’s steep-walled river valleys are transformed into breathtaking landscapes of ice. From early January until late February, the cliffs of Misotsuchi, Onouchi Hyakkei, and Ashigakubo draw over 100,000 spectators with their glittering icicle cascades. The parks are open throughout the day and for several hours at night, when they are illuminated by beams of colored light.

The Misotsuchi icescape forms naturally, but the other two locations are created with hundreds of meters of pipes and hoses that zigzag across the cliffside. High on the ridges above are large tanks of water. Gravity and siphoning action pull the water down through many small holes in the hoses, where it flows over the cliff face and freezes into fantastic shapes.

The parks and their elaborate irrigation systems are maintained by local volunteers who are affectionately known as “icicle men” (hyochū ojisan). Using ropes, crampons, and ice picks, the icicle men regularly scale the ice-covered cliffsides to unkink hoses, lay new pipelines, or remove blockages. A handful of men perform upkeep throughout the year, but during the icicle season, as many as 30 men are needed to maintain a single location.

Children 12 and younger can enter the icescape areas for free. Visitors can receive a stamp from each park on a special card, and the completed card can then be shown at certain local businesses such as onsen (hot springs) to receive discounts and other perks.

氷柱会場(日本語仮訳)

毎年冬になると、秩父の険しい壁に囲まれた3つの川の渓谷は、息をのむような氷の景色へと変化する。1月上旬から2月下旬にかけて、三十槌、尾ノ内百景、あしがくぼの岩壁には、光輝く氷柱の滝に引き寄せられ、10万人を超える鑑賞客が訪れる。氷柱会場は日中ずっと開放されており、夜も数時間のあいだ開場される。夜には色とりどりの光で氷柱がライトアップされる。

三十槌の氷景は自然に形成されるが、他の2つは、岩壁の表面をジグザグに曲がる数百メートルに延びたパイプとホースで作り上げられる。尾根の高いところに大きな水槽があるのだが、重力と吸い上げ作用により、ホースの多数の小さな穴を通って水が岩肌を流れ、幻想的な形に凍結する。

氷柱会場とその精巧な水引システムは、愛情を込めて「氷柱おじさん」として知られている地元のボランティアによって維持されている。氷柱おじさんは、ロープ、アイゼン、アイスピックを使用して、氷で覆われた崖を定期的によじ登り、ホースのねじれを直したり、新しいパイプラインを敷設したり、詰まりを取り除いたりする。わずか数名の男性たちによって、年間を通して維持管理されているが、氷柱の季節には、ひとつの場所を維持するために30人もの男性が必要である。

12歳以下の子供は無料で入場できる。氷柱会場を訪れた人は、それぞれの会場で特別なカードにスタンプを押してもらうことができる。スタンプが集まったカードを温泉などの地元のお店で見せると、割引や特典がもらえる。

●パート2: 各氷柱会場を説明する、3つのサブセクション

Misotsuchi

The icicles at Misotsuchi span roughly 50 meters of the southern cliff of the Arakawa riverbed near Ōtaki. Water from the heights freezes as it flows over the rocks, forming crystal curtains along the water’s edge. There is a light display at Misotsuchi every night, and the park remains open later on Saturdays, Sundays, and holidays. Entry costs ¥200. Visitors can reach Misotsuchi by bus, a 40-minute ride from Seibu-Chichibu Station. Paid parking is also available.

Onouchi Hyakkei

The icescape at Onouchi Hyakkei is a 250-meter-long, 60-meter-high wall of ice in the Onouchi Valley near the town of Ogano. A stunning view of the ice can be seen from a suspension bridge that crosses the Onouchi Gorge high above Onouchi Creek. On five nights every winter, the icicles and bridge glow with colored lights. Food stalls with hot food are set up, and the ¥200 entry fee includes a free cup of amazake, a sweet, mildly alcoholic rice drink. Free parking is available, and there is also a bus from Seibu-Chichibu Station that takes about 70 minutes to the Onouchi Keikoku Iriguchi bus stop. From there it is a 20-minute walk to Onouchi Hyakkei.

Ashigakubo

Created in 2014, the icescape at Ashigakubo is the newest of Chichibu’s icicle attractions. It is located in the town of Yokoze, in a narrow gorge formed by Hyōnosawa Creek. A path flanked by pillars of ice leads beneath a torii gate into the gorge, where ice has transformed the trees and rocks of the hillside into bizarre and breathtaking shapes. The 200-meter-wide, 30-meter-high display is so spectacular that Laview, a luxury sightseeing train operated by Seibu Railway, slows as it passes to allow passengers a view of the icescape. Friday through Sunday nights and on holidays, the scene is lit with boldly colored lights.

The entry fee for Ashigakubo is ¥300, and it includes a free cup of either amazake or black tea brewed from Yokoze-grown tea leaves, which is provided by local volunteers. Because parking is limited and the access road can become quite crowded, visitors are strongly advised to come by train. The icescape is only a 12-minute walk from Ashigakubo Station. Those coming by car can park at Michi no Eki Kaju Kōen, a 10-minute walk from the icescape. 

三十槌

三十槌の氷柱は、大滝近くの荒川河川敷の南側の崖に、約50メートルにわたり広がっている。高いところから流れ落ちる水は、岩肌を流れる際に凍結し、水の縁に沿ってクリスタルカーテンを形づくる。三十槌は毎晩ライトアップされるが、会場は土曜日、日曜日、祝日は遅くまで開いている。入場料は200円。三十槌までは、西武秩父駅からバスで40分で行くことができる。有料駐車場も利用可能である。

尾ノ内百景

尾ノ内百景の氷景は、小鹿野町近くの尾之内渓谷にある長さ250メートル、高さ60メートルの氷の壁である。尾ノ内沢に高くそびえる尾ノ内渓谷を横断している吊り橋から、氷の壁の素晴らしい景色を眺めることができる。毎年冬の5日間は、色とりどりの光でライトアップされる。温かい料理を販売する屋台が設営され、入場料の200円には、甘くてアルコール度の低い米酒である甘酒が一杯無料で付いてくる。無料駐車場が利用可能である。また、西武秩父駅からバスが出ており、尾ノ内渓谷入口バス停まで約70分で、そこから尾ノ内百景までは徒歩20分である。

あしがくぼ

2014年に造られたあしがくぼの氷景は、秩父の氷柱名所の中で最も新しいものである。横瀬町にあり、氷ノ沢によって形成された狭い峡谷にある。氷の柱に挟まれた小道は、鳥居の下をくぐって峡谷へと通じている。そこでは、斜面の木々や岩が、氷によって風変わりで息をのむような形へと変化している。その外観は、幅200メートル、高さ30メートルの壮観を呈し、西武鉄道が運営する豪華観光列車ラビューは、ここを通過する際、乗客が氷景を眺めることができるように速度を落として走行している。この景色は、金曜日から日曜日の夜まで大胆な色でライトアップされる。休日も同様である。

あしがくぼの入場料は300円で、これには無料の甘酒1杯または紅茶1杯がついてくる。これは、横瀬で育った茶葉から作られた紅茶で、地元のボランティアにより提供されている。駐車場はスペースが限られており、会場までの道路が非常に混雑する可能性があるため、訪れる際には電車で来場することを強くおすすめする。氷景は、芦ヶ久保駅から徒歩わずか12分のところにある。車で行く必要がある人は、氷景から徒歩10分のところにある道の駅果樹公園に駐車することができる。

(1)関心を引き起こす「リード文」

冒頭のリード文は話題を提供し、魅力的なイメージを作り出し、
その場所に関する興味深い事実を伝えることで、読者の注意を引きます。

(2)一般情報(What・Where・When)

このセクションの長さ・詳細のボリュームは、解説文や話題によって異なります。
一般的には「何を、どこで、いつ」を紹介し、さらに「なぜそれが起こったのか」など、より多くの情報を提供します。

(3)2番目で紹介したテーマを掘り下げる

これは、すべての解説文に含まれているわけではありません。場合によっては、上記の(2)と混在することもあります。
このセクションは必ずしも必要ではありませんが、読者の興味をそそるような新しい視点・情報を提供します。
上記の例、「氷柱会場」の文章の場合は、「氷柱おじさん」の氷柱に対する日々の努力が、読者と観光地、そして町の人々との間に、より深いつながりを感じさせます。

(4)情報のまとめ

このセクションの内容には、多くのバリエーションがあります。それは結論であったり、これまでの情報をどのように理解するかなどの解釈だったりします。
一方で、前のセクションの流れにうまく当てはまらない内容・情報もあります。
例えば、この秩父市の例では、「割引やポイントカード」の情報は、「氷柱の様子や作り方」に関する議論には合わないので、文の最後に持ってきています。

(5)アクセス情報など

ここまでのセクションは読者の興味を引き、まずその場所に行ってみたいと思わせることが目的です。
そのため、交通手段などのアクセスや営業時間などの情報は、最後に取っておくのが一般的です。
あまりに早い段階で(相手が行きたいかどうかを決める前に)これらの情報を与えてしまうと、その後の文章が読み飛ばされてしまう可能性が高くなります。

場合によっては、意図的にこのような情報を入れないこともあります。
なぜなら、これらの情報を含めることにより、文章のトーンがカジュアルで、より商業的(宣伝色が強く)に感じられることがあるからです。


日本語解説文をそのまま翻訳するだけでは、訪日外国人観光客に伝わりづらい文章となってしまいます。
しかし、このように一般的な英語文章の構成を意識することで、地域の魅力がより伝わりやすい多言語解説文に繋げることができます。

第2弾「外国人に分かりやすい多言語解説文とは 〜文章の構成②〜」もご覧ください。
次回はエディターのブレンダンより、嵐山モンキーパークいわたやま様の英語解説文を例に、文章の構成についてご紹介します。

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