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令和2年度、観光庁多言語事業の「優良解説文」に選定されました。

ローカライゼーション
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S. Sato

令和2年度「地域観光資源の多言語解説整備支援事業」で作成した、弊社の解説文が優良解説文に選定されました。

事業の対象となった地域は全65地域、参画した制作会社は8社(解説文は計2,169点)
そのうち2点が優良解説文に選定され、そのどちらも弊社が手掛けた解説文です。

地域協議会 選定した解説文 担当制作会社 専門人材等関係者
永平寺町多言語化
推進協議会
「精進料理」 エクスポート・
ジャパン株式会社
 ライター:Alexander Evans
 エディター:Brendan Craine
 内容監修者:竹内 久美子
大山隠岐国立公園 「蒜山の草原:
蒜山での山焼きを解説」
エクスポート・
ジャパン株式会社
 ライター:Jessica Kozuka
 エディター:Catherine Turley
 内容監修者:Kevin Short

委員による「優良解説文」の選定理由:

永平寺「精進料理」

精進料理の特徴だけではなく、その料理の意味や意義についても説明されており、観光客の知的好奇心に応える内容となっている。
また、非常に自然で流暢な英語で表現されている。

観光庁ホームページ(2ページ目):https://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kankochi/content/001476290.pdf

大山隠岐国立公園「蒜山の草原:蒜山の山焼き」

この解説は文章力が際立っている。
好奇心をそそる魅力的な書き出しで始まり、その後も読み進めたくなるような文章が続く。
直訳の英語とは違い、明らかに執筆者と編集者がこの複雑な内容全体をしっかりと咀嚼し、自らの自然な言葉で説明している。
各センテンスは短くて明快、専門用語やローマ字は一般観光客にとって必要最低限に抑えられている。

観光庁ホームページ (5ページ目) :https://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kankochi/content/001476290.pdf

担当したエディターより、ひとこと:

永平寺「精進料理」 

担当 / ブレンダン・クレイン

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日本の食文化「精進料理」は、修行僧が食べる素朴な料理と知られている一方で、近年、健康的でヘルシーな料理としても注目を集めています。

精進料理といっても、場合によってはとても豪華な料理だったり、あるいは素朴な料理だったりすることがあります。永平寺の雲水さん(修行僧)が毎日食べている素朴な精進料理と、宿坊「永平寺親禅の宿 柏樹関」で食べる贅沢な精進料理は見た目がかなり違うのですが、どちらも精進料理と言えます。贅沢と素朴が表裏一体なので、そのどちらかに対してだけ「ほんとうの精進料理」というような表現を使うことはできませんでした。

また、精進料理はベジタリアン料理として海外で知られていますが、本格的な精進料理は必ずしも肉がNGというわけではありませんので、このことを説明するのは非常に難しいものでした。そのため、この解説文には様々な工夫をする必要がありました。

例えば、精進料理に肉はNGなのか、それともOKなのかという疑問 に対して、まず解説文の冒頭に「不殺生」の概念が精進料理の大前提であることを説明しました。その後、順を追って、修行僧は托鉢(たくはつ)で受けた物はすべて食べるという宗旨(教え)もあることを説明し、この疑問を解決することができました。

さらに、大本山永平寺まで足を運んでくる外国人観光客は、禅宗に興味を持つ人が多いだろうという前提で執筆しましたので、精進料理の由来や特徴を深く掘りさげた方が面白いと思いました。通常、「喜心」や「六味」のような仏教用語 は英訳だけで済ませることが多いのですが、禅宗を学んでいる人にとっては元の日本語が入っている方が喜ばれるのではと思い、the joyful mind (kishin) や、the six flavors (rokumi) のように仏教用語 のローマ字も入れることにしました。

私自身、今回の解説文は内容がとても面白く、精進料理の発展や特徴を興味深く調べながら編集をすることができました。

大山隠岐国立公園「蒜山の草原:蒜山の山焼き」 

担当 / キャサリン・ターリー

catherine's profile

このテーマを外国人に伝える際の最初の課題は、多くの外国人が持つ「自然を燃やす」というネガティブなイメージを克服することでした。このイメージは、焼き畑農業が生態学的に破壊的な森林伐採と結びついていることにも起因しています。また、アメリカやオーストラリアなどでは、毎年、山火事によって森林や人間の居住地が大きな被害を受けています。このような理由から、冒頭の段落では読者の注意を引き、山焼きがなぜ自然災害による山火事と違うのかをすぐに理解してもらうことを目指しました。

次に、「草原」というテーマを海外の方にも感じていただけるように、国際的な規模で議論しました。草原を維持することの重要性を世界に向けて言及することで、日本の状況との関連性を感じてもらえるようにしました。
詳細な説明がなければ、外国人読者の多くは「この方法は安全で、環境にも良い」という単純な言葉を疑ってしまうので、山焼きがどのように環境に役立つのか詳しく説明しました。(例えば、植物の根が生き残り、競争相手が減ることで植物がよく育つということ。また、暖められた地面が種の発芽を助けることも説明しました。) さらに、絶滅危惧種が必要としている草原を森林にしてはいけない、ということも触れました。

最後に、このテキストでは、地域が伝えたかった「ストーリー」にも焦点を当てています。それは、蒜山地域の人々が、何世紀にもわたって自然と共生し、環境を利用しながら伝統を守り続けていることです。日本の伝統的な慣習は外国人にとっても興味深いものですが、ほとんどの外国人は茶道や歌舞伎などの文化しか知りません。私たちは、外国人があまり耳にしない伝統文化のひとつ 、里山と人との関係をぜひ紹介したいと思いました。

数多くある解説文の中から優良解説文に選ばれ、スタッフ一同大変うれしく思います。

解説文の作成にあたり、多大なるご協力をいただいた地域協議会様、内容監修者様、 人文社会科学翻訳センター様、観光庁様、凸版印刷様、関係者の皆様に心より御礼を申し上げます。

今後も、ひとりでも多くの外国人のお客様に地域の魅力を伝えていけますよう、スタッフみんなで邁進してまいります。

引き続き、エクスポート・ジャパンを何卒よろしくお願い申し上げます。

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