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コンテンツ制作時、現地取材の前に行うべき準備とは?

ローカライゼーション
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S Yamada

2022年07月13日

エクスポート・ジャパンでライティングを担当しています、イギリス出身のソフィアです。

本日は、多言語ライティングの「取材準備」についてご紹介します。ライティングに現地取材は欠かせませんが、それと同じように、取材の準備もとても大切です。

2022年2月、新潟県にある十日町市立里山科学館 越後松之山「森の学校」キョロロ様より、「音声ガイドの多言語ライティング&ナレーション制作」と「デジタル解説文の翻訳」のご依頼をいただきました。キョロロ様は、十日町の生態系と雪里での生活を紹介する科学館です。
今回、私はキョロロ様の執筆を担当させていただきましたので、その取材時に私がどのように実際の取材準備を進めたか、ご紹介したいと思います。

私が行った事前準備は、下記の4つです。

1. 施設の事前リサーチ
2. 音声ガイドに関する提案書の作成
3. 用語集の作成
4. 重要なトピックについてのノート作成

1. 施設の事前リサーチ

はじめに、キョロロ様の公式サイトを訪れ、ブログや動画など、英語・日本語の両方で拝見しました。事前リサーチは必ず日本語と英語で行います。これは、言語によって異なる情報が発信されている場合があるためです。
次にキョロロ様から頂戴した資料に目を通し、施設で展示されている地域の自然環境について理解を深めました。また展示パネルのデータや画像・統計を確認することで、キョロロ様はどのような科学館か、どのように情報を発信されているのかなどを把握することに努めました。

これらの事前リサーチを行う中で目に留まったのが、展示パネルのデザイン・構成でした。詳細なテキストに加え画像が豊富で、漢字にはふりがなもあり、分かりやすい図で説明がされていました。後日の取材で、それは館内を訪れる子供から大人まで、みんなに面白い情報を提供するために、スタッフの皆様が工夫を凝らしたレイアウトだということを知りました。事前にリサーチし気づいたことを、取材でスタッフの皆様に問いかけることで、さらに多くの新たな情報を引き出すことができました。

このような気づきを取材前にできるだけ自分の中に溜めておくことが事前リサーチの目的です。

展示パネルの例。画像が多く、また子供の目に入りやすい下部には漢字にふりがなが振ってある。

2. 音声ガイドに関する提案書の作成

事前リサーチによって全体的な概要を把握した後は、仕様書で最終納品物の内容を再確認しながら、音声ガイドの提案書(アウトライン)を作成しました。提案書の内容は、主に下記の通りです。

・音声ガイドのコンセプト
・2つのフォーマット案
・常設展の音声ガイド作成のご提案(もともと作成のご予定はありませんでしたが、弊社より新規提案を行いました)
・提案内容にあわせて館内を色分けしたマップ

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提案内容が一目でわかりやすいように、提案内容別に館内を色分けしたマップ

このように弊社より具体的なライテイング・プランを提示させていただくことで、クライアント様および社内メンバーの間でプロジェクト全体の具体的なイメージを共有することが可能になります

3. 用語集の作成

提案書を提出した後は、取材中に出てくる可能性のあるキーワードや専門用語、固有名詞などをまとめた用語集の作成に取り組みました。

基本的に用語集には、下記の3つのパターンがあります。

 ①日本語⇒英語「伐採する」 ⇒ fell (trees); cut down [trees]; deforest
 ②日本語⇒英語 (ふりがな付き)「伐採する(ばっさい)」 ⇒ fell (trees); cut down [trees]; deforest
 ③日本語⇒英語 (ひらがな+解説付き)「伐採する(ばっさい)」 ⇒ fell (trees); cut down [trees]; deforest. “All of the beech trees in Bjinbayashi were cut down at once so that the owner could sell the wood and fund his move to Tokyo.”
用語集のまとめ方3パターン

今回事前に作成した実際の用語集(一部抜粋)
事前に作成した実際の用語集(一部抜粋)

3パターンの書き方のうち、どの単語をどのパターンでまとめておくのかは作成者の裁量ですが、自分だけが参照する場合には、意味やふりがなのみを記載した①もしくは②のパターンでまとめておくことが多いです。文脈が無いと意味がわかりにくい単語は、③のパターンで例文と一緒にメモをしておきます。

用語集を作成しておくことで、取材当日に知らない単語に出会っても、慌てずに、その場でスムーズに理解することができます。また、用語集をあらかじめ作成しておくことには、取材だけではなく、執筆の際にも正確な言葉を探すのに役立ち、時間の節約にも繋がるというメリットがあります

4. 重要なトピックについてのノート作成

取材前に、自分専用のノートを準備しました。今回は、事前にいただいた施設内の展示パネルの文章を印刷し、重要な箇所にマーカーを引いたり、私の考えやメモを書き込んだりして作成しました。場合によっては、オリジナルのノートを自分で一から作成する場合もあります。

トピックに関する情報を整理し、ノートにまとめておくことで、当日の取材がよりスムーズになり、思考も整理されます

今回作成したノートの一部(一部抜粋)
今回はいただいた資料にマーカーを引いたり、メモを書き加えたノートを準備

最後に

「日本の仏教、戦国時代、伝統芸能」など込み入ったテーマの場合は、宗教や歴史背景について細かく理解したうえでライティングする必要があるため、より複雑な事前リサーチが必要となります。
例えば文化財のリサーチでは、地域独自の歴史や、歴史上の人物が生きていた時代背景など(社会や政治情勢)。また国立公園などの自然のテーマを扱う場合にも、植物がどのような気候のもとで生存しているか、また場合によっては、生物学的メカニズムまで調べておく必要がある場合もあります。

実は、事前に時間をかけて入念に調べたことでも、最終的にそれについて書かない判断をする場合も多くあります。しかし、だからといってその事前リサーチの時間が無駄になるかというと、そういうわけではありません。なぜなら、そういったリサーチはテーマへの理解を深め、結果的に執筆作業をスムーズに進める助けとなるからです(表面的理解だけで執筆作業を行うことは至難の業です)。

ライターやエディターというと、文書を書く技術にスポットが当たりがちです。しかし実は、本当に品質の良い英語解説文を作成するためには、「書く力」のみならず、「テーマに関する深い知識や理解を得る力」も同じくらい重要であると考えます。そして、そのためには今回ご紹介したような入念な取材準備が不可欠です。

過去の関連記事:
外国人に分かりやすい多言語解説文とは 〜文章の構成①〜
外国人に分かりやすい多言語解説文とは 〜文章の構成②〜
「戦国時代」は英語でどう表記すべき?
地域の魅力を伝える英語解説文とは


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