
AI翻訳と機械翻訳の違いとは?実務で使えるAI翻訳の活用コツ
ローカライゼーション弊社は日々多言語ウェブサイト制作やプロモーションに取り込んでおり、高品質なコンテンツをお届けするため、ネイティブの翻訳者やライターの方々のご協力が欠かせません。翻訳だけでなく、校正や最終のブラウザーチェックまで、すべての工程にネイティブの視点を取り入れており、通常の翻訳より時間やコストを掛けています。
翻訳業務において、翻訳ツールはたくさんあります。例えばGoogle翻訳を代表としての機械翻訳は、あくまで「ざっくり意味を把握するため」のツールとして使うことがありますが、実務レベルでの使用はまったくできませんでした。
そんな中、AI翻訳の技術が進化してきて、普段の実務でも「ちょっと手伝ってもらおうかな」と思える場面が増えてきていますので、今回は従来の「機械翻訳」と「AI翻訳」は実際どう違うのか、実務でのAI翻訳を活用する方法をご紹介したいと思います。

■ 機械翻訳とは?
一般的な「機械翻訳」とは、ルールベースや統計ベースの翻訳システムを指します。機械翻訳の初期バージョンは、単語ごとに訳すような直訳中心のもので、言い回しや文脈はあまり考慮されていませんでした。いまは精度が上がっていて、短い文章や定型文なら十分使えるようになりましたが、適切さを追求するコンテンツ制作には、やはり限界を感じることがあります。
■ AI翻訳とは?
一方の「AI翻訳」は、人工知能(特にディープラーニング)を使って、文章の文脈や意味を理解しながら翻訳するものです。ChatGPTが代表的なツールです。文章をそのまま翻訳してくれるだけではなく、文章の合理性、流れやトーンまでを汲み取ってくれます。細かなニュアンスや、自然な表現も、指示によって対応してもらえます。
■ 機械翻訳とAI翻訳の比較
機械翻訳とAI翻訳はどう違うのか、翻訳結果を比べるために、下記の例文を機械翻訳とAI翻訳に翻訳してもらいました。
例文:
「週末は大阪と名古屋の県境付近の山でハイキングをした」
Google翻訳の例:

一見自然に見えるかもしれませんが、大阪府と名古屋市(愛知県)は地理的に隣接していないため、「県境付近」は正確ではなく、「near the border between Osaka and Nagoya」は英語としても少し違和感があります。
ChatGPTの例:

ChatGPTに英訳を依頼したところ、「地理的に大阪府と名古屋市(愛知県)は直接隣接していない」という点を指摘してくれました。しかもより自然な英訳になるように、複数の提案をしてくれました。任せた翻訳を対応してくれたというより、ネイティブが隣に居ってアドバイスをしていただいた感じですね。このような文章裏にある文脈を理解した上で、自然かつ正確な訳文を提供してくれることは、AI翻訳の大きな強みだと思います。
■ 実務でAI翻訳を活用したコツ
AI翻訳は、ちょっとした翻訳作業をスピーディにこなしたいときにとても頼りになります。ターゲット層、使用目的などの条件を伝えると、実務でも使えるような表現を提案してくれます。私自身も以下のような場面ではAI翻訳の力をうまく借りています。
1.ウェブサイトの翻訳は完了後、一部修正や追加翻訳が発生する場合
ウェブサイト制作の工程では、まず全言語を翻訳してから各言語ページへの流し込み作業に入ります。全て翻訳の対応が完了した後、あるいは流し込み段階で「一文だけ翻訳が抜けていた」や「やっぱりこの表現を変えたい」といったケースが、意外とよく発生します。
ネイティブ翻訳者に都度依頼すると、時間も掛かってしまいますが、AI翻訳に指示を出しながら翻訳してもらえば、制作スケジュールを遅らせることなく対応できる“ミラクル技”として重宝しています。
2. 画像のキャプションなど
SNS投稿用の画像キャプションや、Webサイト上の短い説明文など、「数ワード〜1文だけ訳したい」という時にもAI翻訳は便利です。ChatGPTと写真のやり取りもできますので、画像を共有した上、適切な訳語を返してもらえます。

最終的には、全ての言語ページをブラウザで表示させ、ネイティブが再確認することで、品質とコストのバランスを両立させています。
■ AI翻訳の注意点
上記の例で触れたように、AI翻訳は進化して仕事も便利になりましたが、やはりすべてはAIに任せるのはリスクが高いので、ネイティブチェックが必要になります。
スムーズに翻訳されているように見えても、
・目標となるトーンや微妙なニュアンスがずれている
・最終使用目的として違和感がある
・既存表記や用語に統一されていない
というような落とし穴があります。
特にプロモーションや広告キャチコピーなど、「人の心を動かすこと」が最終目的となるため、AI翻訳は人に刺さらない可能性が高いです。例えば、お笑い芸人のネタやセリフをどれだけ正しく翻訳できたとしても、その背景にある文化やニュアンスが伝わらなければ、誰も笑ってもらえないのと同じです。
だからこそ、AI翻訳後もネイティブチェックによるチェックや仕上げの工程が不可欠なのです。 「ターゲットにどうしたら伝わるのか」というのは、ネイティブならではの視点と感覚が必要になります。こうした言葉のニュアンス調整まで含めて対応できるのが、弊社の強みになりますので、翻訳や表現に関してお困りごとがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
■ まとめ
AI翻訳の進化によって、言語対応の選択肢は確実に広がってきています。私たちはAI翻訳と人力翻訳それぞれの特性を理解したうえで、ネイティブによる翻訳や、コンテンツの目的に応じた最終チェックを含め、最適な翻訳体制を構築しております。翻訳支援ツールもふくめ、AIなどの最新技術もうまく取り入れて、より良い成果物をお届けできるよう心がけています。これからも変化する技術と向き合いながら、お客様の目的に沿った多言語対応をしっかりサポートしてまいります。