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Sake On Air 最新エピソード解説「#37: Awamori 101」

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H. Oikawa

こんにちは、japan-guide.com事業部の追川です。

本日は弊社が制作に携わっているSakeをテーマにしたポッドキャスト『Sake on Air』(以下、SOA)の最新エピソード「#37: Awamori 101」の解説をお届けします。

今回のホストはChristopher PellegriniさんJustin PottsさんSebastien Lemoineさん、プロデューサーは弊社のFrank Walterです。

 

【今回のエピソードのキーワード】

  • millet:アワ(粟)。
  • far-fetched:こじつけの、無理矢理なの意味。
  • undiluted:原液の、薄められていないの意味。
  • maturation:熟成。
  • propagation:繁殖、宣伝。”koji propagation”は麹を繁殖させること。

 

【泡盛の名前の由来】01:40~

泡盛の名前の由来には諸説あります。泡盛はかつて粟を原材料として作られており、そこから命名されたという説。泡が立つその様から、泡盛と呼ばれるようになったという説。そしてサンスクリット語でアルコールを意味する”awamuri”という言葉が由来であるとする説。

 

【ホスト達の泡盛に関する思い出】03:50~

Justinさん:「日本のお酒の中で一番最初に興味を持ったのが泡盛でした。以前、関西に住んでいた頃、職場の近くに沖縄がコンセプトのカフェ/バーがあり、ある日たまたま友人に誘われてそこを訪れました。店内には30~40種類の泡盛がどこで作られているのか、そしてそれらの違いについて説明が書かれた地図が張ってあり、ここで飲んだ泡盛はどれも美味しかったです。」

Sebastienさん:「宮古島にある2つの泡盛の酒造を訪れたのが、私と泡盛の最初の出会いでした。そこでは、泡盛がどのように作られるのかや、その多様性について学ぶことができました」

 

【泡盛とその歴史】07:31~

泡盛は米から作られる蒸留酒で、沖縄原産のお酒です。私たちがお店で見るような泡盛は、一般的にアルコール度数30~40%に調整されているものですが、調整前のものだと43~44%が普通だそうです。現時点で沖縄で発行されている泡盛の製造免許は47、泡盛の酒造は46か所存在します。

蒸留酒の起源は中東で、そこから世界に広まったとされています。沖縄はかつて貿易の中継地として栄え、タイなどと交易を持っていました。そのような環境下で、酒の製造も15世紀~16世紀初頭に始まり、その当時に造られた酒は「王家のワイン」ともいうべきような存在であったとのこと。

首里城の近くの3つの村(赤田村・崎山村・鳥小堀村) に住む30の家のみがこの酒の製造を許可され、その数は後に40家に増えました。もしこれらの家が品質の悪い酒を造ってしまった場合は、王室によって罰せられたといいます。

泡盛は当初、米、アワ、サツマイモ、サトウキビに限らず、タイ米を使うようになる明治時代までは、安く手に入るものであれば何でも原材料として使用していたそうです。タイ米は麹を作る作業に適しており、交易においても長く取引されてきました。現在でもタイ米を使用した泡盛がほとんどで、国産の米を使用した泡盛はごくわずかです。

(エピソード内で沖縄が日本の一部になったのは約150年前とホストが語っていますが、これは俗に言う琉球処分によって琉球王国が廃止された1879年から計算したものです。)

 

【泡盛のGI(地理的表示)】18:30~

泡盛の地理的表示は「琉球」です。この表示が適用されるのは、沖縄県で全麹仕込みという手法を用いて、米と黒麹から造られた単独蒸留(一回のみの蒸留で作られる)酒です。

黒麹は泡盛造りに欠かせない要素ですが、第二次世界大戦の沖縄戦で那覇が爆撃を受け、麹は瓦礫に埋もれて失われてしまったかに思われました。しかし、瓦礫の下に埋まった畳の上に麹が育っているのを発見し、そこから再び黒麹を作ることができるようになったと言われています。黒麹は独特の匂いがあり、生命力が強いため、壁などといった場所でも育ちます。

 

【泡盛の製造過程】21:18~

泡盛は焼酎と比べてシンプルな製造工程を経て造られます。通常、焼酎は2度にわたる発酵を行うのに対し、泡盛は完全に麹のみを使用した発酵を1回のみ行います。

「琉球泡盛」はこの製造工程を経ていることが条件とされますが、「泡盛」の条件はそこまで厳しいものではありません。実際、日本国内の別の地域にも泡盛を製造している、もしくは製造しようとしている場所が存在します。

泡盛の製造工程は、全麹仕込みと呼ばれる発酵手法から始まり、数日間掛けて米を洗い、蒸し、麹を繁殖させます。そしてその後、酵母を混ぜて10~20日間、強い酸性発酵を促したのちに、ステンレスの容器で蒸留を行います。

最後は熟成です。泡盛の場合は「仕次ぎ」と呼ばれる、古酒(沖縄では「くーす」と読む)に若い泡盛を足す手法で熟成を行います。戦前には200年以上の歴史を持つ古酒のストックが存在しましたが、残念ながらこれらはすべて戦争で失われてしまいました。

現在、古酒の条件は3年以上熟成させた泡盛であることとされています。そして例えば、「10年」というラベルを付ける場合、少なくともそのボトルの中身の50%以上は10年ものの古酒で占められていなければならず、また10年以下の古酒が1%でも入っていた場合には、「10年」というラベルを付けることができなくなるというルールが存在します。つまり、仕次ぎで混ぜる酒の中で一番若い酒が50%以上を占めている必要があり、またその一番若い酒の年数=ラベルに表示される年数になるという仕組みです。

泡盛は熟成させるとまろやかで深い味わいになり、ウィスキーが好きな人などには好まれやすい味だろうとホストのChristopherさんは述べています。

泡盛の生産時期はかつては日本酒と同様に気温が低い時期のみでしたが、現在は一年中生産されています。精米は行いますが、最低限米を削るのみで、日本酒ほど米を削りません。またChristopherさんは個人的に、酵母は泡盛造りにおいてもっとスポットを浴びるべき要素だとも述べています。

 

【泡盛を味わうなら】42:00~

沖縄県外で幅広く泡盛を取り扱っているお店や居酒屋は多くありません。Christopherさんのオススメは忠孝酒造で、オンラインで購入も可能です。

SOAが後援を受けているJSS(日本酒造組合中央会)さんが運営する東京・虎ノ門にある日本の酒情報センターでもさまざまな種類の泡盛を試飲することが可能です。

また、Christopherさんおすすめの居酒屋「ぱいかじ」は沖縄県外でも東京に2店舗、埼玉に1店舗を構えており、沖縄の音楽が流れる店内でさまざまな種類の泡盛を楽しめるとのこと。

泡盛の飲み方はロックや水割りが一般的ではありますが、深い味わいを持つ泡盛は食後酒としてストレートで飲むのも良いでしょう。お湯割りも泡盛のアロマを主張しすぎない程度に引き立てるため、フードペアリングに適した飲み方です。

 

【今後の泡盛の可能性・方向性】50:43~

「泡盛は焼酎よりもキャラクターがはっきりとしており、沖縄という一つの地域との結びつきの強さを持っているため、説明がしやすい酒だと思う」と、酒をはじめとした日本文化と海外の橋渡し役を担っているJustinさんとSebastienさんは考えています。さらに、泡盛への関心を高める具体的な方法の一つとして、沖縄の空港で泡盛の試飲を提供してはどうかというアイデアも挙げています。

 

【編集後記

ここまで今回のエピソードの解説を行ってきましたが、実は私は泡盛を飲んだことがありません。泡盛が飲める場所が沖縄県外にあまりないというのが大きな理由ですが、そのほかにも、泡盛はなんだか簡単に手を出しにくいお酒だという漠然としたイメージがあったように思います。泡盛に対して同じような心理的ハードルを感じている方は多いのではないでしょうか。

ただ今回、戦争の被害を乗り越えてきた泡盛の歴史、原材料や製造工程、フードペアリングの話などを聞いたことで、泡盛を飲んでみようかなという気持ちの変化が起こりました(むしろコロナウィルスさえなければ今すぐにでも沖縄料理のお店に飲みに行きたかった・・・)。

次に沖縄を訪れたときには、泡盛を造っている酒造を見学して、今回のエピソードで聞いたことを実際にこの目で確かめてみたいと思います。

 

【SOAについて】

SOAは日本酒造組合中央会(JSS)さんの後援を受け、日本在住アメリカ人のJustin PottsさんをはじめとしたSakeに情熱を燃やす外国人たちが毎回入れ替わりでホストを務め、2週間に1回のペースで新たなエピソードを公開しているポッドキャスト番組です。EXJは公式ウェブサイトの制作を手掛けたほか、毎エピソードの制作に携わっています。