こんにちは、japan-guide.com事業部の追川です。

本日は弊社が制作に携わっているSakeをテーマにしたポッドキャスト『Sake on Air』(以下、SOA)の最新エピソード「#35: Building Breweries Down Under with Zenkuro & Melbourne Sake (Part 1)」の解説をお届けします。

今回のエピソードはゲストにニュージーランド(以下、NZ)で初めてにして唯一の酒造であるZenkuroを立ち上げたDavid Jolld Jollさん(以下、Daveさん)、そしてオーストラリアで初の酒造であるMelbourne Sakeを立ち上げたMatt Kingsley-Shawさん(以下、Mattさん)を迎え、2回の放送に分けてお送りします。今回は前半部分、第1回目の放送です。

ホストはJustin PottsさんChris HughesさんMarie NagataさんSebastien Lemoineさん、プロデューサーは弊社のFrank Walterです。

【今回のエピソードのキーワード】

  • Soft water:軟水のこと。硬水はhard water。
  • Counterintuitive:「直感に反するような」の意味。今回はMattさんが酒造りを学ぶために、あえて日本ではなくNZとアメリカの酒造を訪れたことを、一般的にはcounterintuitiveと思われるような行動だったと自分自身で表現しています。
  • Languid fermentation:languidは「元気の無い、弱々しい」の意味。languid fermentationは「ゆっくりとした発酵」の意味になる。
  • Pipe dream:「空想的な考え」の意味。pipeはドラッグを意味していて、「ドラッグ中毒の人が考えるような非現実的な夢」というのが元々の意味。
  • Batch:辞書で調べると、「1度分、ひと束、一群」などという訳が出てくるが、このエピソードの文脈では「バージョン、第~弾」と理解するのが良いように思える。例えば、”the 3rd batch (of Zenkuro’s sake)”は「Zenkuroで作った3番目の酒」という意味になる。

 

【Daveさん、およびZenkuroについて】04:00~

DaveさんがZenkuroを運営するQueenstownはNZの南部に位置しています。ここは南極からの涼しい風が吹き、乾燥した気候で、酒造りには適した気候だと言えます。

Daveさんが初めて日本にやって来たのは40年前。高校も大学も日本で通い、奥さんも日本人です。今から約15年前にQueenslandに移住し、最初は日本人観光客を相手に観光ガイドの仕事をしていました。

その後、酒造りを学びたいと考え日本に一度戻り、カナダにある酒造YK3にも行きました。その後日本に戻って、John Gaunterさん(SOAのホストの一人でもある)が講師を務める日本酒のコースを修了しました。そしてNZに戻り、最初は日本の酒造を引っ張ってきてNZで酒を売ろうと考えていましたが、結局自ら日本酒を造ることにしました。

Zenkuroでは原材料のほとんどを自ら生産していますが、酵母のように日本から輸入しなければならないものもいくつかあるようです。

 

【Mattさん、およびMelbourne Sakeについて】19:30~

イングランド出身のMattさんはパートナーであるオーストラリア出身のQuentinさんとともにMelbourne Sakeを立ち上げました。

元々、Mattさんはソムリエ、Quentinさんはレストランの経営に関わる仕事に就いていました。よく集まって一緒にお酒を飲んだり、「自分たちが作りたいと思ったもの」を作ったりしていました。酒も多く試作し、ある時これは良いと思えるものができました。そしてかねてから噂を聞いていたNZのDaveさんにメールを送り、Zenkuroで2週間にわたって酒造りを学びました。

この経験を経て、オーストラリアでも酒造りが可能なのではないかと考えた二人は、今度はアメリカの酒造をいくつか訪ね、酒造りについての知識やアイデアをさらに蓄えていきました。オーストラリアでは米の生産が行われており、軟水も存在する環境のため、酒造りを始めることは難しくありませんでした。

ホストのJustinさんに、「ゴールは何ですか?」と問われたMattさんは、使用できるすべてのresourcesとraw materials(原材料)を使用して酒を造ることだと答えています。「遠い夢(pipe dream)のような話ではあるけれども」、今もこのゴールに向かってMelbourne Sakeは酒造りを行っています。

 

【Zenkuroの酒の変遷】31:25~

Zenkuroが初めて市場に出した酒は、酒造りを始めてから3番目に完成したものでした。当時は1番目と2番目に造ったものよりも良いものができたと思って市場に出したものの、今振り返ってみるとそんなに良い酒ではなかったとDaveさんは述べています。7番目に造った酒はとても良い出来で、その次の8番目にはまったく味もスタイルも異なる酒を造りました。商品の改良は常に行われており、今後しばらくの方向性は既に固まっていると言います。

Zenkuroの酒のうち90%はNZ国内で消費されており、レストランにも購入されていますが、購入していくのは和食レストランだけではありません。酒は和食に限らず、さまざまな料理とのペアリングに適した飲み物であるため、購入していくレストランのジャンルも様々だそうです。またDaveさん自身も日本酒だからといって、その卸先を和食レストランに限定する必要は無いと考えています。

 

【NZ、オーストラリアの酒市場】43:51~

MattさんがZenkuroを訪れた際、酒がカクテルや、様々な料理とのフードペアリングに使用されていたりと、地元のコミュニティから強い支持を得ている点に感銘を受けたそうです。

Mattさん曰く、オーストラリアにはSakeは単なる和食のためだけの飲み物ではなく、すべての食べ物に合う飲み物だという考えが存在しているそうです。そのため、Melbourne SakeもZenkuroのような支持を受けられるようになることを期待しています。特に日本人コミュニティの大きいMelbourneの街では、既に高級レストランなどで日本酒が提供されていると言います。

 

【酒造りに伴うプレッシャー】47:02~

ホストのChrisさんは、自身が酒造りを初めて行ったときに「良い酒のイメージを作らなければいけないプレッシャー」を感じたそうです。

「これと似たようなプレッシャーを感じたことがありますか?」という質問に対して、DaveさんはLondon Sake Challengeで高い評価を受けたことが自信につながったと答えています。それに加え、卸先のレストランをしっかりと選ぶことも良い酒のイメージを保つために重要だと語っています。「どんな料理と合わせるのか?」などをレストランに事前にヒアリングし、納得したうえでZenkuroの酒を卸しているそうです。

 

【海外産Sake市場の競争の現在・未来】48:35~

Mattさんは日本国外で生産されるSakeの市場における競争は、現時点ではそこまで激しくないと考えています。そして、今後もそこまで激化することは無いと見ています。

海外では酒税が高く設定されており、低品質の酒が参入してきても生き残りが難しい現実があります。そのため、Sakeの生産業者が海外で劇的に増加するとは考えにくく、平均的な品質も今のまま高い水準を保つことができると分析しています。

 

【編集後記】

私は今の会社に入ってSOAの事業に関わり始めるまでは、海外でこんなにも日本酒が製造されていることを知りませんでした。

今回のエピソードでは、海外で酒造りに取り組むDaveさんやMattさんのような外国人が、美味しい酒を造ることのみならず、酒のブランディングにも細心の注意を払っていることが語られました。個人的には、ホストのChrisさんが明かした、外国人である自分が酒造りを始めるにあたって「良い酒のイメージを作らなければならないプレッシャー」を感じた経験がとても頭の中に残りました。

SOAを通して彼らの好奇心、学び続ける姿勢、責任感に触れることができ、このブログを書くたびにいつも刺激を受けています。

 

【SOAについて】

SOAは日本酒造組合中央会(JSS)さんの後援を受け、日本在住アメリカ人のJustin PottsさんをはじめとしたSakeに情熱を燃やす外国人たちが毎回入れ替わりでホストを務め、2週間に1回のペースで新たなエピソードを公開しているポッドキャスト番組です。EXJは公式ウェブサイトの制作を手掛けたほか、毎エピソードの制作に携わっています。