こんにちは、japan-guide.com事業部の追川です。

本日は弊社が制作に携わっているSakeをテーマにしたポッドキャスト『Sake on Air』(以下、SOA)の最新エピソード「#32: Know Your Hosts: Shuso Imada & Chris Hughes」の解説をお届けします。

今回のエピソードは、前半はSebastien LemoineさんChris Hughesさんを、後半はRebekah Wilson-LyeさんShuso Imada(今田周三)さんをインタビューする形式です。

Chrisさんと今田さんがどのようないきさつで日本酒の世界に深くかかわるようになったのかを掘り下げていきます。

プロデューサーは弊社のFrank Walterです。

 

 

【今回のエピソードのキーワード】

  • Misconceptions: 誤解。誤った認識。
  • Be intertwined with: ~と繋がりがある。~と関連性がある。
  • Moromi: 醪(もろみ)。発酵中の液体のことを指す。日本酒製造においては、麹を加えて発酵中の、日本酒に変わる前の段階の状態を指す。
  • Food pairings: 食品と別の何かを組み合わせることによって食事の体験を豊かなものにする過程のこと。ワインや日本酒などの飲み物と関連してよく使われる言葉・概念。
  • Regionality: 地域性。地域ごとの特色。
  • Geographical Indication (GI): 地理的表示。ある商品の品質や評価が、その地理的原産地に由来する場合に、その商品の原産地を特定する表示。条約や法令により、知的財産権のひとつとして保護される。

 

【Chris Hughesさんへのインタビュー】01:46~

Chrisさんはイギリス・マンチェスターの出身で、現在はWSET(ワイン&スピリッツ・エデュケーション・トラスト)という世界最大のお酒の教育機関の認定を受けた東京の学校で日本酒に関する講座の講師を務めるなど、日本酒に関わる活動を幅広く行っています。

SOAのホストにはもう一人Chrisさんがいるため、今回紹介するChrisさんはBig Chris(背がとても高いため)とも呼ばれています。

現在は日本酒に情熱をかける日々を送るChrisさんですが、昔は特に日本酒に興味を持っていたわけではなかったそうです。

高校時代にアニメや漫画を通して日本という国自体やその文化に興味を持ったことがきっかけで、漫画を日本語で読みたいという思いから大学では日本語を学びました。大学在学中には旅行で3度も日本を訪れたそうです。しかし、これらの旅行中にも日本酒に目覚める機会は無く、大学卒業後にロンドンのレストラン産業で和食材の輸入に関わる仕事をはじめたのが日本酒との最初の出会いでした。

しかし、この時でさえもまだChrisさんの中で日本酒に対する良い印象は無かったとのこと。

そんなChrisさんの運命を変えたのが、岩手県の酒造、南部美人の蔵元である久慈氏がChrisさんの職場で行ったセミナーでした。そのセミナーでChrisさんは特別純米酒を試飲したときに、日本酒の魅力を初めて知ったそうです。

Chrisさんには「酒が、誤解(先入観)無くみんなが楽しめるもの、誰か教えてくれる人がいなくても気軽に注文できるものになってほしい(wants sake to be something everyone is drinking without misconceptions, something that people ask you for without needing to be introduced to it first)」という思いがあり、これが日本酒講座の講師を引き受ける大きなモチベーションにもなったと語っています。

 

【酒と伝統芸能の繋がり】21:50~

あるとき、Chrisさんは栃木県の渡辺酒造を訪れました。彼はその蔵元との会話の中で、かつて能の舞台を観に来た観客が上演中に酒をたしなんでいたという話を聞かされます。また、岐阜県の別の酒造を訪れた際には、日本酒の製造過程で、”もろみ”に歌舞伎の音声を聞かせている場面に遭遇します。

そのほかにも、明治時代の日本を代表する俳人として知られる正岡子規と、福岡県の旭酒造が造る有名な日本酒である獺祭の面白い関連性にも言及しています。

「獺」とはカワウソを意味します。カワウソには、エサの魚たちを地面に広げながら食べる習性があり、その様子は「獺祭」と称されます。正岡子規も詩や俳句を作る際に、紙を床にまき散らす癖があり、自らを「獺祭書屋主人(だっさいしょおくしゅじん/だつさいしょおくしゅじん)」と称していたとのこと。

日本酒の獺祭と正岡子規に直接的な関係があったわけではありませんが、このようなストーリーを伝えていくことが日本酒を売っていくうえではとても大事になるとChrisさんは考えています。

特に外国人の場合は日本酒のラベルに書いてあることがわからない場合が多いため、このように興味を惹きそうなストーリーを伝えていくことで、日本酒の各ブランドと消費者の関係をより近づけることができると言います。

ちなみに、Chrisさんの日本酒関連でオススメの漫画は『もやしもん』だそうです。

 

【日本の酒情報館-Japan Sake and Shochu Information Center-】38:45~

このポッドキャストの収録場所にもなっている、日本酒造組合中央会が運営する虎ノ門の「日本の酒情報館-Japan Sake and Shochu Information Center-」。その館長を務めているのが今田周三さんです。

この情報館は日本語と英語で酒蔵などの酒関連の豊富な情報が手に入るほか、常に約100種類以上の日本中から集めた酒を取り揃えています。そのほかにも蔵元などによるセミナーを日本語・英語のバイリンガルで開催しており、国内外の酒好きに注目されている施設です。

 

【今田さんの少年時代と1960~70年代の日本酒産業】43:30~

今田さんは酒屋の息子として生まれましたが、幼少期に酒に対して抱いていた印象は決してポジティブなものではありませんでした。

毎日のように酔っ払いを見かけては、彼らから隠れていたと言います。そんな彼の幼少~少年時代はビールの値段が高かったため、日本酒は市場で大きなシェアを占めていました。しかしこの頃の日本酒は今ほど美味しいものではありませんでした。日本酒産業は好調でしたが、儲かったお金は味のクオリティよりも生産力の増強のために投資されました。

 

【今田さんの学生時代~家業を継ぐまで】49:45~

そんないきさつもあり、今田さんは外交官を志して大学では国際法を専攻します。時代は1980年代で、今田さんもこの頃の時代の多くの若者の例に漏れず、国内の文化よりも国外の文化により強い興味を抱く若者の一人でした。しかし、実家の酒屋の唯一の跡取りだった今田さんは結局実家に戻ることになりました。実家の酒屋は2002年に合併を経て、株式会社太田商店となりました。

 

【近年の日本酒産業について】1:04:00~

近年の日本酒産業における最大の変革は1996年、山形県の高木酒造によってもたらされました。

その頃、日本酒産業は下降線をたどっており、高木酒造の14代目はその息子である高木顕統氏に酒造をたたむことを告げました。すると若干26歳だった顕統氏は彼のオリジナルの酒を造りたいと父に申し出、許可を受けました。そして完成した酒「十四代」は濃厚で甘みがあり、酒のアロマが感じられるものでした。淡麗辛口な日本酒が主流であった当時の日本酒市場において、この酒はとても高い人気を得ました。これが日本酒全体の人気の復活、若者ファンの増加を巻き起こしました。

 

【日本酒産業の今】1:04:00~

今田さんは、これからは日本酒のRegionality(地域性)がとても重要になると見ています。

そもそも酒に地域性が存在するのかという議論もありますが、今田さんは酒には地域性があり、それが酒に多様性をもたらし、さらに地方の小さな酒造でも商機をつかむためのキーになると言います。

日本は、例えばイタリアと同様、南北に長い国土を持ち、一つの国に特徴の異なる魅力が同居しています。食も地方によって特徴が異なり、その分Food paringsも多様になります。現在は日本酒のブランドに目が向けられがちですが、GI(原産地表示)にもっと注目してもらいたいと今田さんは語ります。

【編集後記】

現在日本酒のスペシャリストとして活躍しているお二人ですが、決して初めから日本酒に対してポジティブな印象を持っていたわけではないということが意外でした。

彼らのお話を聞いていて感じる共通点は、日本酒の最大の魅力は、その味以上に、それぞれの日本酒が持つストーリーであるように思えます。

グローバル化によって外国人にとっても日本酒との距離が縮まった今、このストーリーテリングの重要性は以前にも増して大きくなっています。

弊社もSOAの制作を通して、今後も海外に向けた日本酒文化発信の手助けを行ってまいりたいと思います。

 

【SOAについて】

SOAは日本酒造組合中央会(JSS)さんの後援を受け、日本在住アメリカ人のJustin PottsさんをはじめとしたSakeに情熱を燃やす外国人たちが毎回入れ替わりでホストを務め、2週間に1回のペースで新たなエピソードを公開しているポッドキャスト番組です。EXJは公式ウェブサイトの制作を手掛けたほか、毎エピソードの制作に携わっています。