こんにちは、japan-guide.com事業部の追川です。

本日は弊社が制作に携わっているSakeをテーマにしたポッドキャスト『Sake on Air』(以下、SOA)の最新エピソード「Aroma & Sake」の内容の解説をお届けします。

今回のホストはChris HughesさんRebekah Wilson-LyeさんSebastien Lemoineさん、プロデューサーは弊社のFrank Walterです。

日本酒に関するディープなお話を英語で1時間聴くのは大変という方もいらっしゃるかと思います。この解説が少しでもご参考になればうれしいです。

 

【今回のエピソードのキーワード】

  • yeast: 酵母。有機物を分解しながら成長して出芽や分裂をしていく微生物の総称。日本酒造りにおいては、日本酒の原料となる米を発酵させ、アルコール分を作り出すという大きな役割を担う。
  • enzyme: 酵素。特定の物質を分解・消化・変化させる役割をするタンパク質のこと。酵母が生物であるのに対して、酵素はあくまで物質の一種である。日本酒造りにおいては、麹菌が出した酵素が米のデンプンを糖化する。
  • ester: エステル。アロマを生み出すもとになる物質で、フルーツや香水などに含まれる。日本酒造りの過程では、エステルは高い濃度のアルコール内で酵母が反応することによって生成される。
  • ferment: 発酵させる。日本酒を造る際、酵母を使用して米を糖化・発酵させることでアルコール分を生み出すことができる。発酵を意味する名詞は英語で”fermentation”という。
  • waft (up): 漂わせる。匂いが香る。

 

【日本酒のアロマ】02:09~

アロマというと、巷ではアロマオイルなどが一般的です。一方で皆さんは日本酒の世界にもアロマという概念があることをご存知でしょうか。

日本語には、香る順番に応じて日本酒のアロマを3種類に分類する表現が存在します。一つ目はグラスから香る「上立ち香」、二つ目は口に含んだ時に広がる「含み香」、そして三つ目は飲み込んだ後に喉の奥から香る「戻り香」。

調べてみると、ワインにも英語で”attack”、”mid-palette”、”finish”という同様の表現が存在するようです。

また酒類総合研究所は、清酒を構成する香りは次の8種類に類別することができるとしています:

「リンゴ」、「バナナ」、「アルコール」、「酢」、「醤油・カラメル」、「たくあん」、「米・麹」、「木・草」

(参照:https://www.nrib.go.jp/data/nrtpdf/2006_1.pdf

先述したように、ワインをはじめとする他の種類の酒にもアロマは存在します。しかし日本酒のアロマの特徴について、SOAのホストたちの間で次のようなやり取りがありました:

「ワインはとても雄弁だが、日本酒の場合は、注意深くその声を聞く必要がある(Wine speaks quite loudly. With sake, you really need to listen hard, it speaks in quite quiet voice. The flavours and aromas are subtle compared to wine)」

「日本酒はとても日本的で儚いものだと思う。桜のように、短い期間だけやってきて、少しずつ消えていく(That’s so Japanese that the aromas to be ephemeral, sort of little bit like sakura. It comes in such a short time and the delight slowly fades away )」

日本文化に精通した外国人ならではの非常に面白い考察ですね。

 

また世の中には、どうしても酒についての深い知識がないと、その感想について声を出して語るのは恥ずかしいという雰囲気があるかもしれません。しかし、SOAのホストは

「まずは飲んでみて、あとは自分のアロマに対する感覚と記憶を信じて、それらを活かしながら少しずつ酒に関する知識をつけていけばいい (Just drink it… Trust your senses of aroma and the memories that you have and… use that as your building block to expand your knowledge)」と言います。

酒の感想に正解・不正解など無く、まずは飲んでみて、感じたことを自由に表現してみることが日本酒の楽しみ方・学び方だということですね。

【酒の味の歴史と吟醸の起源】39:30~

ある研究によると、江戸時代の一般的な酒はなんと「醤油のような味」がしたそうです。

これは発酵の過程で保存性を高めるために灰を混ぜることで発生するみりんのようなアロマが原因とされ、このようなタイプの酒は「灰持酒(あくもちざけ)」と呼ばれます。

酒の原料となる米が不足した第二次世界大戦の前後には、さまざまな異なる原料を混ぜることで酒の流通量低下を防ごうとしたため、アロマが大きく損なわれた酒が多く流通していたと言われています。

またかつて主に西日本では硬水を使用して酒が醸造されていました。しかし、広島県では軟水で醸造が行われていました。軟水は硬水と比べてミネラル含有量が極端に少ないために日本酒造りに必要な酵母の質が悪く、酸味が非常に強い酒しか造ることができませんでした。そこで広島のある酒造は、あえて酵母にとって厳しい条件下で酵母を育てることで、高いアルコール分を生み出し、アロマの元となるエステルを生成し、香り高い日本酒の醸造に成功しました。これが現在の「吟醸」というタイプの日本酒の起源です

ただし、その頃は「吟醸」いう言葉は無く、「吟造」と言われていました。しかし、1984年に新潟のある酒造が「吟醸」という言葉を使用し始めて以来、「吟醸」が一般的に定着しました。

 

【協会酵母】49:33~

このように、日本酒造りにおいてキーとなる酵母ですが、今日では多くの酒造が「協会酵母」という日本醸造協会が提供する酵母を使用しています。この協会酵母には「協会~号」という名前でさまざまな種類が存在しますが、それらのほとんどは、全国のあるどこかの酒造の蔵から抽出したものです。協会酵母の変遷は主に三つのステージに分けることができます:

20世紀前半 – 安定的な発酵を可能にした、わずかなアロマを生み出す酵母(6号、7号)

1960年頃~1980年頃 – コンクール出品を想定した、よりフルーティーなアロマ、酸味を生み出す酵母(9号、10号)

1990年頃~現在 – 酸味を抑えた日本酒を造るための酵母(1601号、1801号、1901号)

 

【まとめ】56:14~

最後のパートでは、ホストが考える日本酒が持つアロマのメリットとデメリットについて語っています。

主なメリットとしては、アロマは各酒にキャラクターを吹き込み、そのことが消費者が酒を選ぶ際に大きな影響を与えることを挙げています。

反対にデメリットとしては、食事とのペアリングにおいて制限を作ってしまうことを挙げています。アロマが存在することによって、食べ物と酒の間に相性の良し悪しがはっきりと浮き出てしまいます。

【編集後記】

私はこのデメリットに関して、個人的には必ずしもネガティブな面ばかりではないかなと思っています。というのも、制限があることで、むしろ自分なりの日本酒と食べ物のベストマッチを探す楽しみがあると思うからです。味覚や嗅覚は人それぞれなので、それこそ今回のエピソード前半で出てきた「自分の感覚と記憶を信じて」、自分なりの正解のペアリングを探してみるのも良いのではないでしょうか。

 

【SOAについて】

SOAは日本酒造組合中央会(JSS)さんの後援を受け、日本在住アメリカ人のJustin PottsさんをはじめとしたSakeに情熱を燃やす外国人たちが毎回入れ替わりでホストを務め、2週間に1回のペースで新たなエピソードを公開しているポッドキャスト番組です。EXJは公式ウェブサイトの制作を手掛けたほか、毎エピソードの制作に携わっています。