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視覚障害者の困りごとを解決する支援機器:テクノロジーの進化と可能性

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Y. Uto

視覚障害者の日常生活において、他の人には当たり前であることが彼らにとっては新たな挑戦や障害であることがあります。しかし、現代のテクノロジーの進化は、視覚障害者の方々がより自立し、快適な生活を送るための新しい可能性を切り拓いています。

視覚障害者へのサポートといえば、従来からの手段として点字や点字ブロック、白杖、音がなる信号機、盲導犬などが挙げられます。これらのツールや手段は重要であり、多くの方々にとって欠かせないものです。しかし、こうした従来の手段に加えて、近年ではテクノロジーの導入により、より多くの支援が実現しています。

先日、視覚障害者向け総合イベント「サイトワールドが4年ぶりに開催されました。会場では38個のブースで、さまざまな支援機器が展示されており、視覚障害のある当事者の方もたくさん来場され、それぞれの機器や用具を試していました。

バリアフリーな社会を実現するためには、テクノロジーが提供する新しい解決策に注目することが不可欠です。この記事では、「サイトワールド」より「視覚障害者の困りごとを解決する支援機器」の実例をいくつか取り上げ、様々なユニバーサルデザインのアプローチをご紹介します。

サイトワールドの様子の画像

移動の支援:単独で歩行する際のサポート

歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」は、靴に取り付ける機器とiphone向け専用アプリが連携し、目的地までのナビゲーション情報を靴の中の振動を用いて伝えるデバイスです。公共交通機関の経路などは含まず、徒歩移動の部分のみとなりますが、聴覚や手を使わずに振動で道順を案内することで、利用者がまわりの安全確認に、より集中できるようにしているそうです。

日常生活の支援:音声案内を備えた家電

三菱電機株式会社のブースでは、ユニバーサルデザインの視点に基づいたらく楽アシスト対象の製品(炊飯器やレンジグリルなど)が数多く紹介されていました。IHクッキングヒーターは、設定状況や注意喚起などを文字で表示すると同時に音声で教えてくれます。日常的に使う家電は、ボタンや液晶表示が読めないと正しく安全に使うことが難しいため、音声案内がいかに重要かがわかります。

クッキングヒーターの液晶表示のイメージ画像

ソニー株式会社のブースでは、テレビやカメラの音声読み上げ機能などが紹介されるほか、オープンリングデザインのイヤホンも注目を集めました。このイヤホンは、耳を覆わないデザインなので、装着したままでも周囲の音がクリアに聞こえ、また長時間つけておくことができるそうです。視覚障害者がスマートフォンの音声情報を利用する際、イヤホンを頻繁に使用することが一般的ですが、同時に周囲の環境を把握するために聴覚も同時に活用できるのは非常に便利ですね。

「文字認識・画像認識 + 音声読み上げ」による支援機器

視覚障害者向けの音声読み上げ機能や画像認識技術は、情報へのアクセスを劇的に向上させ、彼らがデジタルな環境でよりスムーズに情報を得る手助けとなっています。

(1)リアルタイムに文字情報を音声化

OrCam Read(オーカムリード)は、軽量の携帯AIリーダーです。本体レーザーを読みたい活字にあて、ボタンを押すと、その範囲にある文節を内蔵カメラが瞬時に認識し、読み上げてくれます。Wifi接続は不要で、イヤホン等に接続することで、プライバシーを守りながら読みたいものを、即時に音声で聞くことができ、これは非常に画期的だと感じました。実際に試してみると、レーザーをきちんとあてることができさえすれば、すぐに読み上げてくれました。 

オーカムリードを使っている様子の画像

(2)リアルタイムに様々な情報を音声化

多くのAndroidに標準搭載されいてるTalkBackは、主にWEBサイトの内容を読み上げてくれるスクリーンリーダーとして知られていますが、音声によるテキスト入力も可能な機能が備わっています。さらに、Lookoutは、スマートフォンのカメラと最先端のAI技術を活用し、周囲の物体や画像、テキストを認識してリアルタイムで音声化してくれる機能です。テキストの読み取りも瞬時にできて驚きましたが、カメラを向けると「被写体が何か」を認識し、音声で教えてくれます。たとえば、カメラで周囲をうつした時に、そこに椅子があった場合、「椅子」と音声で教えてくれるのです。画像の内容説明や食品ラベルの識別(一部の国で可能)など様々な機能があり、日常的な作業のサポートをしてくれます。さらに、Lookoutは現在34言語に対応しています。

チラシのテキストをLookoutで読み取っている様子の画像

(3)大量の文字情報を拡大表示&音声化

展示されていた機器の中には、カメラとモニターを活用して印刷物を拡大表示し、同時に音声で読み上げるものが多数ありました。ただし多くの場合、表組や複雑なレイアウトの部分では、わかりやすい順序で読むことが難しく、まだ限界もあるようです。

以上、簡単にご紹介しましたが、「音声読み上げ機能」については次回のブログでさらに深堀りしてお伝えする予定です。

テクノロジー×人による支援

テクノロジーの進化により、一人でできることも増えてきましたが、何か困った時に頼りたいのは「人」かもしれません。たとえ身近に助けてくれる人がいない場合でも、テクノロジーの力を借りることで、人による支援が受けやすくなります。

例えば、アイコサポートアプリは、遠隔のオペレーターがスマホカメラに映った映像や位置情報をもとに、必要な視覚情報を声で伝えてくれるというサービスです。見えない・見えにくい方の「今、見たい。知りたい。」をサポートしてくれます。

まとめ

ここでご紹介したのは、視覚障害者支援機器のごく一部であり、実際に展示会で試してみての感想にほかなりません。(注意:ご紹介した機器を推奨・宣伝するものではありません)

様々な工夫やアイデア、テクノロジーを組み合わせることで、これからも視覚障害者の「お困りごと」を解決するための新しい製品やサービスが増えていくことでしょう。共通の課題として挙げられるのは、「使い方を音声で教えて欲しい」といった要望や、「ユーザーの金銭的負担が大きい」という点です。

将来的には、支援機器の使い方やトラブル対応の情報などが、スマートフォンを使って手軽に音声で聞けるようになると、利便性が一層向上するでしょう。たとえば、Accessible Codeは、専用アプリが不要でスマートフォンがあれば誰でも簡単に使えますので、これらの支援機器との連携が進むと、ますます使い勝手がよくなる可能性があります。

社会的責任の一環として、企業や開発者は視覚障害がある方のニーズに対応した製品やサービスの開発に注力しています。その結果、視覚障害者の方々の社会参加が促進され、より自由に生活できるようになるのではないでしょうか。