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視覚障害者のスマートフォン用支援技術の利用状況調査結果より

アクセシブルコード
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Y. Uto

視覚障害者のスマートフォン利用の割合は、国や地域によって異なりますが、一般的には増加の傾向にあります。これは、音声読み上げや音声認識、点字入力などのアクセシビリティ機能の向上や、視覚障害者向けのアプリケーションの開発などが影響しています。

たとえば、以下のような方法は既に一般的になっていると言えるでしょう。

  1. 音声読み上げ機能: 画面上のテキストを音声で読み上げる機能。画像等の場合は、設定された代替テキストが読み上げられます。
  2. 音声認識: 音声で指示を出すことで操作できる音声認識機能。これによって、テキストの入力やアプリケーションの操作が可能です。
  3. 点字入力: 特殊な点字キーボードや点字ディスプレイを使って、スマートフォンを操作できます。
  4. 触覚フィードバック: 操作した時に、ユーザーの指や手に振動や圧力などの物理的な刺激を与えることで、操作の結果や状態を伝える技術。
  5. 声の合成技術: 人間の声に近い自然な音声にするための技術。日本語の読み誤りを減らすために、自然言語処理などの研究も進められています。
  6. 拡大鏡機能: 画面上のテキストや要素を拡大する機能。
  7. 特殊なアプリケーションやソフトウェア: 視覚障害者向けのアプリケーションやソフトウェアは多数開発されています。

視覚障害者が、実際にどのようなデバイス、OS、ブラウザ等を使っていて、それらがどのような支援技術と組み合わされて活用されているかを定量的にまとめた調査結果の第3回目が公開されました。日本視覚障害者ICTネットワーク (JBICT.Net) が2023年5月から6月にかけて実施した第3回支援技術利用状況調査(外部リンク)です。

今回はその中から特に「スマートフォン」の利用状況に関して、いくつかご紹介いたします。

なお、回答者は以下のとおりです。(詳細は調査報告書をご覧ください)

見え方の状況:「全盲(見て確認することはない)73.3%、ロービジョン(見て確認することがある)26.7%」
障害の状況:「視覚単一障害 93.8%、視覚・聴覚の重複障害 4.9%」 
有効回答数:225件 

■ スマートフォンの利用状況

回答者の中で、「スマートフォンを使わない」と答えた方は6.2%(14名)です。

世代別に見ると以下のとおり、30代以下は特にスマートフォンの利用率がとても高い(100%)ことがわかります。40代以上でも約91%の方はスマートフォンを利用していると言えます。

「スマートフォンを使わない」と答えた方

年代 人数(人)
10代 0/5
20代 0/27
30代 0/27
40代 2/33
50代 5/66
60代 5/44
70代 1/20
80歳以上 1/3

見え方の状況別では、「使わない」と答えた方は、全盲の方では7.3%、ロービジョンの方では3.3%でした。また、ロービジョンの方では、約21%の方がパソコンよりもスマートフォンをよく使っていると答えており、スマートフォンの普及がうかがえます。

■ 何をどのように利用している?

調査結果によると、約91%の方がiPhoneを利用していて、約76%の方はiOSのみを使っています。

支援技術で最も使われているのは、「iOS VoiceOver」で、約9割の方に使われています。

ボイスオーバーの設定画面のイメージ画像

VoiceOver (ボイスオーバー)とは、目が見えない方でも使えるように端末上で起きていること(操作など)や画面に映し出されている文章を読み上げてくれるスクリーン・リーダー機能です。iPhoneには標準で備わっており、設定画面でオンにすることですぐに使えるようになります。VoiceOverをオンにすると、操作方法が通常と異なる場合が多いため、VoiceOver専用のジェスチャ(動作)を覚える必要があります。

そのほか、iOSのズーム機能、配色の変更設定、TalkBack(Androidのスクリーン・リーダー)も活用されているようです。

次に、スマートフォン利用時の点字ディスプレイについての設問では、「音声のみを使い、点字を使わない」が約84%であり、点字よりも音声を利用する方が圧倒的に多いのがわかります。

点字ディスプレイのイメージ画像

点字ディスプレイとは、画面に表示された文字情報を点字に変換してくれるデバイス。表面に穴があり、ピンがあがったりさがったりして点字が表示されます。

■ スマートフォンの用途

スマートフォンを利用して行うこととして多かったのは、以下の通りです。

[8割以上の方が使っている]

・メールの送受信

・検索サービスを用いたweb検索

・時刻や日付の確認 

[7割以上の方が使っている]

 ・ニュース、新聞の閲覧

 ・ブログ・SNSの閲覧

 ・アラーム・ストップウォッチ・タイマー

 ・動画視聴

 ・音楽再生

 ・印刷物などを対象とした文字認識

 ・文字によるコミュニケーション(LINE, Facebook Messenger, Slackなど)

このほか、「色や明るさの判断(42%)」「紙幣の識別(31%)」「点字データやDAISY図書による読書(32%)」等、視覚障害者に特有の使い方も見受けられます。

また、「パソコンとスマートフォンを両方利用する人」にたずねた設問で、パソコンとスマートフォンとで大きな差があったものの一つが「印刷物などを対象とした文字認識」です。パソコンでは約32%、スマートフォンでは約76%の方が選択しています。

■ ここ数年の変化

ここ数年で特に便利になったものと、特に不便になったと感じるものをたずねた設問があります。「文字認識」や「歩行支援」などが便利になった一方で、「CAPTCHA(画像認証やパズル認証などで、操作をしているのが人間かどうかを判定する仕組み)の増加」や「アクセシビリティが低いアプリケーションやWEBサイトの増加」などを指摘する声もありました。

「私はロボットではありません」チェックを付ける認証画面のイメージ画像

■ WEB閲覧のアクセシビリティ関連の利用状況

今回の調査結果にはありませんでしたが、前回の調査(2022年度)(外部リンク)から、ウェブコンテンツ側に付加されることが多いアクセシビリティ関連機能の利用状況を見てみましょう。 

まず、Webページの先頭からメインコンテンツの開始位置へ移動できるページ内リンクのことを「スキップリンク」と言いますが、利用状況は、「よく使う・時々使う(約79%)」「使わない(約21%)」です。ただ、全盲の方の方がロービジョンの方よりも「よく使う」と多く答えています。

近年では、WEBページ作成の際にはスキップリンクを提供しなくても、h1要素で見出しをマークアップしたり、main要素と用いたりすることで、必ずしもスキップリンクを実装する必要はないと言われています。マークアップ時のアクセシビリティ対応に取り組むことは非常に大切です。同時にスキップリンクも意外と多くの方に利用されていることが本調査でわかりました。

参考:  総務省動画チャンネル:視覚障害者(全盲)のウェブページ利用方法(外部リンク)

次に、Webページに「音声読み上げ」といったボタンがある場合に活用しているかどうかという設問では、「よく使う・時々使う(約28%)」「使わない(約71%)」であり、使っていない方の方が多いという結果でした。これは、最初からVoiceoverなどのスクリーン・リーダーを使っている方が多いため、ボタンをわざわざクリックして読み上げさせる必要がないということかもしれません。しかし3割の方には活用されているということがわかります。 

最後に、Webページに文字サイズを変更するためのボタンがある場合に活用しているかどうかという設問では、「よく使う・時々使う(10%)」「使わない(90%)」でした。ただこちらは、全盲の方のほとんどが「使わない」ためです。ロービジョンの方に限ると「よく使う・時々使う(約51%)」「使わない(49%)」であり、ロービジョンの方にとっては便利な機能となっているようです。

今回はスマートフォンの利用状況を中心にお伝えしましたが、パソコンの利用状況についても報告されています。詳しく知りたい方は、第3回支援技術利用状況調査報告書 | 日本視覚障害者ICTネットワーク(外部リンク)をぜひご覧ください。

■ さいごに

弊社のアクセシブルコードも、視覚障害者の方がスマートフォンを用いて印刷物の「音声読み上げ」を活用していただくためのサービスの一つです。アクセシブルコードは、視覚障害者の方だけでなく、視力低下等で見えづらさを感じている方や、日本語が読めない外国の方も、簡単に音声で情報を聞いていただけるように開発された二次元コードです。専用アプリや個別の設定は必要なく、スマートフォンさえあればどなたでもお使いいただけるので、アクセシブルコードが付いた商品を見かけたら、ぜひ一度読み取ってみてください。