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多言語整備で活用できる補助金事業のご紹介

ローカライゼーション
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E. Kobayashi

先日訪れた高野山。現地の方によれば来訪者の7〜8割が外国人旅行者なのだそうです。主要な場所の看板には英語解説文が併記されており、熱心に説明を読まれていた旅行者の姿が印象に残りました。私自身も解説文を読みましたが、こうした情報があることで、その土地への理解がいっそう深まると改めて感じました。

一方で、様々な地域の方々と対話する中で「多言語整備がまだ十分ではない」というお声もたびたび耳にします。重要性は理解しつつも、予算の確保やリソース、ノウハウの不足といった課題もあるかもしれません。

そのような状況でぜひご活用いただきたいのが、この時期に公募が出される観光庁の「地域観光資源の多言語解説整備支援事業」です。

日本語の「翻訳」ではなく、英文をゼロから「ライティング」

この事業の大きな特徴は、日本語原稿を基にした翻訳事業では無い、ということです。観光庁登録の英語ネイティブ専門人材が実際に現地を訪れ、対象となる施設や文化財等について取材し、その情報をもとにゼロから英語ライティングを行います。

なぜそれが重要なのか。

先日私が参加した高野山の「奥の院ナイトツアー」で、まさにその事例となる場面がありました。外国人向けにネイティブがガイドするグループと、日本人向けに日本語でガイドするグループに分かれたのですが、ツアー開始時の説明で以下の違いがありました。

・外国人向け:空海や真言宗の歴史、神仏分離の概念など、基礎知識から丁寧に解説
・日本人向け:共通認識がある前提で、歴史的背景を大幅にカット

日本人にとっての「当たり前」の前提知識は、外国人旅行者にはありません。解説文作成においても、ネイティブの視点で彼らが何を求めているかを汲み取ってライティングすることで、来訪者の地域への理解促進や満足度を高めていくことに繋がります。

■ 解説文作成にとどまらない「副次的メリット」

取材に訪れる弊社の専門人材は、本事業をはじめとするライティング実績が豊富な事に加え、外国人視点での助言やメディア記事作成などインバウンド向けプロモーションに関する他の事業にも携わっています。取材時に、解説文に関する提案は勿論させていただきますが、それ以外にも、地域の方にとっては外国人視点での地域の魅力についてヒアリング・意見交換する場としてご活用頂くこともできます。

ある地域では、当初「施設内パネル」の解説文作成を予定されていました。しかし、取材時の意見交換の場で公式サイトには最低限の情報しかなく、本来の魅力が伝わりきっていないという課題が見えてきました。パネルだけでなく、施設の魅力を発信し誘客につなげることを目的としたWebサイト用解説文を提案し、現地での理解促進とWebでの発信強化を盛り込んだ内容へとブラッシュアップすることができました。

(※注:上記のような変更はあくまでも配分された予算内での実施となります)

■ 多言語整備に活用できる他の補助金事業

最後に、多言語整備に使える他の補助金事業についてお伝えします。

以下の1)、2)は、上記観光庁多言語事業で作成した解説文の「媒体化」にあたって活用できる補助金でもあります。

1)文化庁:文化財多言語解説整備事業
文化財の多言語解説にかかるコンテンツ制作を支援する事業で、基本的には、ウェブサイトやアプリ、ARなどのデジタルを活用した媒体制作にかかる費用が対象となり、対象経費の1/3(33%)が補助率限度となっています。観光庁多言語事業で作成した解説文を活用することを原則としつつ、それが無い場合や追加したい場合には、本事業でも解説文作成にかかる経費が補助対象となります。
また、補助率には加算要件が複数あり、その一つに「英語解説文を観光庁推薦人材から監修を受ける場合 (※観光庁事業での制作文を活用する場合も該当)」には、10%の加算となります。
令和7年度は、5月中旬~6月中旬に募集があり、48事業が採択されています。募集時期は年度毎に少しずつ異なっておりますので、こちらの補助金をご検討の場合は、文化庁の該当ページを常時確認されることをおすすめします。

2)環境省:国立公園等多言語解説等整備事業
国立公園等における案内板やビジターセンターの展示物等について、情報発信媒体整備と多言語解説文作成を支援する事業です。多言語解説文作成の部分は、解説文の作成、専門人材等による文章の監修が対象となり、「作成・監修にあたっては原則として観光庁が推薦する人材を活用すること」と明記されています。補助率は、補助対象経費の3分の2以内となっています。
令和7年度は、4月中旬~5月中旬に1次募集、6月下旬~12月上旬に2次募集がありました。

3)その他
受入環境全般の補助金・支援制度のうち、多言語化対応(多言語案内・表示・案内板・案内所整備等)が対象となる項目を含むものとして、令和8年度の観光庁予算決定概要に以下の記載があります。

・地方誘客の核となる拠点の整備(インバウンド受入環境整備)(スライド#18)
・国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業 (スライド#35)
・地方誘客促進に向けたインバウンド安全・安心対策推進事業 (スライド#55)

以上、多言語整備で活用できる補助金事業の紹介でした。

どの地域にもその土地ならではの歴史や文化があります。訪れた先でその魅力に触れることは、まさに旅の醍醐味。適切な多言語整備は、外国人旅行者の来訪のきっかけとなるだけでなく、滞在時の体験をより深いものへと変え、満足度を高めることにも寄与します。

ご紹介した補助金事業のことや、その他ライティングに関することなどご相談がございましたら、是非お気軽にお問い合わせください。

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