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多言語化でのポイントと、活用できる補助金事業の紹介

ローカライゼーション
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E. Kobayashi

先日ある観光地を訪れた時に、たまたま手に取ったパンフレットに載っていた地歌舞伎の芝居小屋。興味を惹かれ足を延ばしてみると、大きく立派なのぼりと共に築120年を超える立派な建物がありました。この芝居小屋は自分たちが演じるために、村民自らが建てられたのだそう。建物の随所に、当時の歴史背景や人々の想いがこめられたストーリーがありました。ここに英語での説明があったら、外国人旅行者がどれだけ興味深く読むだろう…。そんなことを考えながら芝居小屋を後にしました。

外国人旅行者を受け入れるにあたって、多言語での案内があったほうが望ましいというのは言わずもがなのことだと思います。今は自動翻訳の精度も随分あがりましたし、簡単な注意喚起だったり、場所の案内など、多少間違っていても伝われば十分!というものに関しては、機械翻訳で問題ありません。

では、観光地についてよりよく知ってもらう、魅力を伝える、満足度を上げる、という目的でいうと、機械翻訳は十分でしょうか?

観光庁の調査結果

「観光地において、訪日外国人旅行者の9割超が解説文を読んでいる」というのが、観光庁の調査結果として出ており、観光資源の魅力を伝える上で、解説文は重要な役割を担っています。

これは日本人でも同様だと思います。上述した芝居小屋などでも、ただ建物を見るだけでは分からない情報を、分かりやすい解説文があれば読みたくなりますし、そこで得た情報によって、その観光地に更に魅力を感じます。

一方、同調査結果として、解説文の内容が、訪日外国人旅行者にとって分かりにくく、必ずしも魅力的であるとは言えないという課題も提示されています。訪日外国人旅行者が特に気になる点としては、「解説文が長すぎる」「知らない人名・地名がある」「内容が難しすぎる」「英語表現がおかしい」といった点が挙げられています。

日本人がもつ前提知識は外国人旅行者には当てはまらない場合が多く、補足説明が必要であったり難解すぎる表現は改めたりするなど工夫が必要です。また、訪日外国人旅行者の興味・関心を把握する必要もあります。

例えば下図で示しているように、「豊臣秀吉」という日本人には一般的に知られている歴史上の人物も、外国人旅行者にとっては全く知らない人物である可能性があります。内容をストレスなく読んでもらったり、更に興味を抱いてもらうには、固有名詞だけではなく適切な補足説明が求められます。

機械翻訳では難しいのは勿論、仮に人力翻訳であったとしても、日本語をベースとした翻訳では、上述のように必ずしも外国人旅行者にとって魅力的な解説文にはならない可能性があります。

このような課題への対応として、観光庁では2018年度より多言語解説整備支援事業を実施しています。弊社も初年度より参画し、2023年度迄に67地域において解説文作成に携わってきました。

多言語整備で活用できる補助金事業

多言語整備の必要性は分かるけれど、限られた資金の中での優先順位を考えるとやっぱり機械翻訳になる、、、そんな場合もあると思います。
ここでは、上記観光庁の補助金の他にも多言語化に活用できる代表的な補助金事業をご紹介したいと思います。

文化庁 「文化財多言語解説整備事業」

文化財の多言語整備を対象として、基本的に補助対象経費の1/3(33%)を補助率限度として補助金を支給する事業です。なお、こちらの事業では補助率をアップさせることができるさまざまな条件が設定されています。例えば、「本事業における英語解説文について、観光庁が推薦する人材から監修を受ける場合には、補助率に10%の加算を行うことができる」という条件などがあります。

令和5年度は、6月中旬~7月中旬に募集があり、22事業が採択されています。採択された事業一覧を見てみると、Webやパンフの多言語化に加え、QRコードの活用やAR・VRコンテンツ、デジタルサイネージなどが多く見られます。
追加募集の有無や時期は年度毎に少しずつ異なっておりますので、こちらの補助金をご検討の場合は、文化庁の該当ページを常時確認されることをおすすめします。

環境省「国立公園等多言語解説等整備事業」

国立公園、国定公園、長距離自然歩道等にある、案内板やビジターセンター等の展示物を対象とした多言語化の補助金事業です。
英文作成においては、観光庁の「地域観光資源の多言語解説整備支援事業」の各指針を参照することが要件となっており、前述の観光庁が推薦する人材リストの活用が求められています。
令和5年度は、4月以降3回にわたり公募がありました。

観光庁「訪日外国人旅行者周遊促進事業費補助金(歴史的資源を活用した観光まちづくり推進事業)」

歴史的資源を活用した高付加価値化や、環境整備に係る費用の一部(補助率1/2以内、2,000万円上限)を補助するものです。この中には、施設改修等のハード面に係る経費の他、多言語対応(HPや予約システム、案内標識、掲示板等)に関する経費も含まれます。
令和5年度では、3月に1次公募、7月末より2次公募がありました。

観光庁「インバウンド受入環境整備高度化事業」

訪日外国人旅行者の周遊促進・消費拡大を図るため、「まちあるき」や広域的周遊に係る環境整備に要する費用の一部を補助する事業です(条件により補助率1/2or1/3以内)。その中で、「ストレスフリー・快適な旅行環境の整備」という項目に「多言語案内の整備」が含まれています。
令和5年度は、2月以降10月まで数度にわたり公募がありました。

弊社ネイティブスタッフは前述の観光庁人材リストに登録があり、長年にわたって解説文作成に携わってきたノウハウもございます。弊社の多言語化事業(ライティング)について、詳細をお知りになりたい方はこちらも併せてご参照ください。
皆様の地域、施設での多言語化をご検討の際には、是非お気軽にご相談頂ければと思います!