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観光とSDGsの関係性

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H. Oikawa

昨今、耳にする日が無いくらい巷でよく聞かれるようになったSDGs。
SDGsは、Sustainable Development Goalsの略語で、日本語訳では「持続可能な開発目標」とされ、17個の目標で構成されています。観光はこれら17個のすべての目標に多かれ少なかれ関係している重要な分野です。しかし、観光産業が各目標にどのように関わっているのかをすぐに説明するのは難しいのではないでしょうか。

実は、UNWTO(世界観光機関)は、そのメインのウェブサイトとは別に、TOURISM FOR SDGsという特設サイトを立ち上げています。そのサイトでは、観光とSDGsの関連性や、世界中のサステナビリティ関連の観光の取り組み事例などが詳しく紹介されています。しかし、日本語でここまで観光とSDGsについて細かくまとめられたウェブサイトは見つかりませんでした。

そこで、本記事では17個の各目標と観光の関連性について、UNWTOのメインのウェブサイトやTOURISM FOR SDGsの情報をもとに、日本語で要点を簡潔にまとめました。なお、すべて読んでいるお時間が無いという方は、#8、12、14のみでも目を通していただけると嬉しいです。なぜならこの3つは、UNWTOが、観光が特に大きな直接的影響をもたらす目標として挙げている目標であるためです。


1. 貧困をなくそう

SDGs - 1. 貧困をなくそう
1. 貧困をなくそう

観光は現在、世界で最も成長率が高い産業の一つで、2019年時点では世界のGDPの約10%(WTTCウェブサイト参照)を占めています。同様に、2019年時点での世界の雇用の約10%を創出しています(WTTCウェブサイト参照)。つまり、観光は多くの人々に就労の機会を与え、貧困を減らすことに貢献しています。

現状、労働力の搾取や、地元にお金が落ちないビジネスモデルが存在することも確かです。そのような例を減らし、広い範囲に観光による経済的恩恵が享受される仕組みを構築していくことが求められています。

2. 飢餓をゼロに

SDGs - 2. 飢餓をゼロに
2. 飢餓をゼロに

TOURISM FOR SDGsのウェブサイトでは、「観光は持続可能な農業の実現に貢献する」と説明されています。 1の「貧困をなくそう」に共通する点も多いですが、地元の食材を使用したレストランやホテルを利用したり、農業体験に参加することなどで、その地域にお金を落とし、持続可能な農業に貢献できるとされています。

もちろん、では他の地域から仕入れた食材を使用することはいけないのかと言うと、そういうわけではありません。可能な限り地産地消を行い、経済的恩恵を偏りなく享受していこうというのが、この2番目の目標の趣旨です。

3. すべての人に健康と福祉を

SDGs - 3. すべての人に健康と福祉を
3. すべての人に健康と福祉を

国や地域の観光が成長すると、税収が増えます。税収が増えると、そのお金で福祉や公共サービスを充実させることができます。つまり、観光によって直接、健康と福祉に大きな影響があるわけではありませんが、観光業に従事していない人にまで、その恩恵を届けることができるというわけです。

大きな観光地では、マス・ツーリズムによる弊害として、地元住民と観光客の間の軋轢がよく話題に上ります。こういった場合、最も大事なことはこの軋轢の原因をつきとめ、解消していくことです。それにプラスアルファとして、観光が地元の福祉や公共サービス改善とどのように関連しているのか、地元住民による理解を促すためのアプローチも必要だとされています。

4. 質の高い教育をみんなに

SDGs - 4. 質の高い教育をみんなに
4. 質の高い教育をみんなに

世界中で、貧富の差や、性差によって大きな教育格差が生じています。現代の日本でも、家庭間の貧富の差による子供の教育格差は頻繁に語られるところです。

UNWTOのレポートでは、「観光業に従事している人々の多くは、女性や若者が占めている」と説明されています。観光業に従事する人々が適切な経済的恩恵を享受できるようになるということは、多くの女性や若者が経済的恩恵を享受できるようになるということでもあります。そして、それが教育格差の是正につながっていくという考え方です。

5. ジェンダー平等を実現しよう

SDGs - 5. ジェンダー平等を実現しよう
5. ジェンダー平等を実現しよう

前述の通り、観光産業は多くの女性によって支えられています。職場での男女間での待遇改善は、観光業に限らず、社会全体で求められています。しかし、観光業にはとりわけ多くの女性が従事していることから、観光業での男女間の待遇改善が与える社会的インパクトは特に大きいものになるとされています。

6. 安全な水とトイレを世界中に

SDGs - 6. 安全な水とトイレを世界中に
6. 安全な水とトイレを世界中に

宿泊業や飲食業などをはじめ、実は観光活動には多くの水の使用が伴います。また例えば、人体にとって有害な洗剤やシャンプーなどを使用してしまうと、水質汚染にもつながります。限られた水資源を適切に使用することはもちろん、水質を汚染しないための努力が、観光客側、受け入れ側の双方に求められています。

7. エネルギーをみんなに、そしてクリーンに

SDGs - 7. エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
7. エネルギーをみんなに、そしてクリーンに

水と同様に、観光産業はエネルギーも大量に消費します。そのため、観光業における環境負荷の低いエネルギーへのシフトは、とても大きな影響を与えることになります。産業界による技術革新はもちろん、消費者側にもエネルギーの適切な使用・選択が求められています。

8. 働きがいも、経済成長も

SDGs - 8. 働きがいも、経済成長も
8. 働きがいも、経済成長も

前述の通り、観光業は世界のGDPおよび雇用の約10%を創出し、女性や若者も数多く従事している産業です。このような観光業で適正・平等な雇用機会や待遇を提供することで、社会的・経済的に大きなプラスの影響を生み出すことができます。

9. 産業と技術革新の基盤をつくろう

SDGs - 9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
9. 産業と技術革新の基盤をつくろう

観光の発展は、公共および民間のインフラを必要とします。観光の発展に投資することは、インフラの発展や公共政策の決定を左右します。そしてインフラの発展や公共政策の改善により、イノベーションが生まれたり、資源効率化にもつながります。これにより、さらに多くの観光客を受け入れ、投資を受けやすくなるなどといった発展のサイクルを作り出すことができます。

10. 人や国の不平等をなくそう

SDGs - 10. 人や国の不平等をなくそう
10. 人や国の不平等をなくそう

観光は、幅広い地域の人々や、数多くのステークホルダーを巻き込んで成り立つ産業です。これらの人々全体で利益を享受できるような観光産業の仕組みを発展させることは、都市と地方、世代、性別、人種などを乗り越えた平等な社会の実現に大きく貢献します。

11. 住み続けられる街づくりを

SDGs - 11. 住み続けられる街づくりを
11. 住み続けられる街づくりを

#9で述べられているインフラの発展のほかにも、観光は自然・文化遺産の保存という観点からも非常に重要です。観光産業には自然・文化遺産が必須であり、これらの保存には観光産業による支援も不可欠で、これらは相互依存の関係にあると言えます。環境や文化を守りながら、スマートな街づくりを目指すにあたり、観光の振興が大きな役割を果たします。

12. つくる責任、つかう責任

SDGs - 12. つくる責任、つかう責任
12. つくる責任、つかう責任

観光活動は、エネルギー、水、廃棄物など、さまざまな資源の大量の生産と消費を伴います。それゆえ、観光産業がこれらに配慮した生産・消費活動にシフトすることは、経済的、社会的、環境的に非常に大きな影響を生み出すとされています。

13. 気候変動に具体的な対策を

SDGs - 13. 気候変動に具体的な対策を
13. 気候変動に具体的な対策を

大量の輸送や生産、消費を伴う観光は気候変動に大きな影響を与え、同時にその影響を大きく受ける産業です。世界中で急速な成長を遂げる観光産業が、その成長を維持しつつ、いかに環境負荷を抑えることができるかが、今後の世界にとって重要な課題であるとされています。

14. 海の豊かさを守ろう

SDGs - 14. 海の豊かさを守ろう
14. 海の豊かさを守ろう

海の豊かさが失われてしまうと、生物多様性のみならず、海の魅力によって支えられている観光地やそこで暮らす人々も危機に晒されてしまいます。観光を受け入れる側も、観光客側も、海を単なる資源として消費するのではなく、守りながら共生していく意識や取り組みが必要とされています。

15. 陸の豊かさも守ろう

SDGs - 15. 陸の豊かさも守ろう
15. 陸の豊かさも守ろう

#14と同様に、陸上の生物多様性や自然環境も観光にとって欠かせない要素です。またその価値を広め、保護活動のための資金を集めるという観点から、陸上の生物多様性や自然環境にとってもまた、観光は欠かせないものです。つまり、観光と自然環境の保全は密接に相互依存しているということになります。

16. 平和と公正をすべての人に

SDGs - 16. 平和と公正をすべての人に
16. 平和と公正をすべての人に

観光は人や文化の往来を活発にし、私たちに知見を広める機会を与えてくれます。分断の危機が叫ばれる現代において、他者を理解することが紛争を防ぐための第一歩であることは言うまでもありません。
国境や人種を越えた相互理解を促す活動として、観光は平和構築に大きく貢献することができる産業であると言えます。

17. パートナーシップで目標を達成しよう

SDGs - 17. パートナーシップで目標を達成しよう
17. パートナーシップで目標を達成しよう

皆さんもご存知の通り、「観光産業」は、世の中のあらゆる産業分野の集合体です。観光分野で何かを実行しようとする際には、分野を越えた複数の人・組織の協力関係が不可欠となります。観光をきっかけに新たなパートナーシップが生まれたり、既存のパートナーシップから新たな観光分野の発展のきっかけが生まれたりすることで、社会的課題の解決にも近づきます。
またUNWTOは、人材、インフラ、政策、研究などへの投資を積極的に行っていくことが、イノベーションやデジタル化、サステナビリティの推進などを進め、世の中の発展やパートナーシップ強化につながるとしています。


以上、それぞれの目標と観光の関係性についてでした。

最後に

ここまで読んでいただくと、観光がどれだけ広い世の中に与える影響を与えるのか、そしてその影響力の大きさがどれほどのものか、改めてお分かりいただけたのではないかと思います。また17の目標に分かれてはいるものの、内容が被る部分が多いように感じられた方も多いかと思います。これは、すべての目標がつながっていて、どれも疎かにすることができないという意味だと考えます。例えば、「#1 貧困をなくそう」と思ったら、「#4 質の高い教育をみんなに」や「#10 人や国の不平等をなくそう」といった取り組みも同時進行で行う必要があります。

日々、目の前の仕事に追われていると、自分の仕事が社会に与える影響などを考える余裕を失ってしまいがちです。そんな時に、この記事が皆さんにとって、少し離れたマクロな視点からご自身のお仕事と社会の関係性を考えるきっかけになったり、ご自身の観光活動が社会にどのような影響を与えるか考えるきっかけになれば幸いです。観光とSDGsの関係性についてより詳しく知りたい方は、前述のUNWTOのサイトのほかに、以下のようなページがおすすめです。

なお、本記事内の各目標のアイコン画像は、国際連合広報センターのウェブサイトからダウンロードさせていただきました。

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