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ジャパンガイドで見る 訪日中国人個人旅行者の都市別アクセス傾向

ジャパンガイド
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Y. Takakura

「爆買い」に象徴されるショッピングの分野で何かと注目を集めることが多い中国からの訪日観光客ですが、昨今では「”モノ”消費から”コト”消費へ」と様々なメディアで話題にされているように、買い物以外の観光に関心が移りつつあります。また、ビザ緩和等の影響で、上海などの一部の都市ではすでに個人ビザの発行数が団体ビザのそれを上回ったというデータも出ています。

今回は訪日外国人向け日本観光情報ポータルサイトであるジャパンガイド英語版のデータを参照しながらアクセスの傾向を読み解き、都市別の中国個人旅行者の趣向を考察していきたいと思います。

 

ジャパンガイドにおける中国人ユーザーの属性

ジャパンガイドは約95%が自ら旅行の計画を行うFIT(Free Independent Traveler)層で構成されており、現在英語版・繁体字版の2言語を運営しています。こうした中、中国語(簡体字版)の運営を行っていないのにもかかわらず、中国からのアクセスは年々増加傾向にあり、直近1年間のアクセス数はサイト全体で14位に位置しています(「国別アクセスランキング」ご参照)

また、中国からのアクセスをユーザーのブラウザ言語設定別にまとめたものが「言語別アクセスランキング」です。

最も多いのは中国語(簡体字)で全体の8割を占めます。母国語ではない英語で積極的に情報を取得しようとする、一定の”知識層”と言うことができるかもしれません。それに続く形でアメリカ英語・イギリス英語・シンガポール英語・中国語(繁体字)などがランクインしていますが、これらは中国人ユーザーの他、(中国に駐在する)各国の駐在員からもアクセスが発生していると捉えることができます。実際ジャパンガイド会員の中にも、中国に駐在しながら休暇で日本を旅行しようとするユーザーが一定数存在します。

「国別アクセスランキング(年間セッション数)」

*Google Analyticsデータ(2016/06/01-2017/05/31)参照

 

「言語別アクセスランキング」 (ユーザーのブラウザ言語設定参照)

*Google Analyticsデータ(2016/06/01-2017/05/31)参照

 

都市別アクセスランキング

 

japan-guide.comへのアクセスが多く発生している都市をランキング化した表です。

*参照元:http://nihaoninja.blog.jp/archives/1050402545.html

*Google Analyticsデータ(2016/06/01-2017/05/31)参照

上位4都市に関してはGDPや人口をみても順当な順位ですが、5位以下は必ずしもGDP通りではない結果となりました。様々な要因が考えられるため、一概には説明し難い部分ではあるのですが、ロケーションが順位に大きく影響しているのではないかと考えられます。距離の近いことで飛行時間短縮や航空券が安くなるといような点です。

その他、文化・歴史的な背景も関係しているように思います。

たとえば、5位福州が省都である福建省は、海外に移住している華人の4分の1が同省出身者で占められているというデータもある程、海外志向が強いエリアです。

下記は非公式のデータではありますが、「出境人数(海外渡航人数)」をみると38%と上海、北京、天津、広東省、浙江省に次ぐ渡航率となっています。

*参照元 : http://tieba.baidu.com/p/4847673106

また、日本ではあまり聞き慣れない山東省の省都である済南(Jinan)は、元来、農業が盛んな地で日本への果物の輸出等を行っており、現在関西国際空港、羽田空港から定期便が運航しています。

人口やGDP以外にも訪日客数に影響する要因が複数考えられますので、現在訪日人口が多い上海、北京、広州、深センに続く攻略先を選定する際にはあらゆる視点で検討する必要があると考えられます。

 

中国個人旅行者に人気のページ

中国からアクセスが多いページのランキングです。

*Google Analyticsデータ(2016/06/01-2017/05/31)参照

サイト全体の傾向と比較し、アクセスが多いページを赤文字で記載しました。

Chopsticksに見られるようにお土産を選定する際に参照されている様子やCell Phones in Japanのように実際に訪日の際に必要な情報を取得するために閲覧されている様子見受けられます。余談ですが、日本では一般的な箱に入っているお箸などはお土産として人気があるようです。

一方、Japan Photo Galleryのような、訪日未経験者から多く見られていると思われるページにもアクセスが集中していました。

2016年には中国から約630万人が日本を訪れましたが、中国の全人口に照らし合わせると5%弱に過ぎない数値でもあります。訪日意欲はあるものの、まだ訪問できていないというユーザーからのアクセスも一定数発生していると考えることができます。

 

都市別人気ページ比較

続いて、都市別の人気ページ比較です。

*Google Analyticsデータ(2016/06/01-2017/05/31)参照

ご存じの通り中国は広く、エリア毎に国が違うと言っても過言ではないほど、独自の文化や言語が存在し、趣向にも違いが見られます。今回は主要3都市をピックアップさせていただきました。

[上海]

上海は中国の中でも南に位置する都市で、緯度は日本の鹿児島県と同じぐらいです。自分たちのエリアにない魅力に惹かれてか、HokkaidoSapporoNisekoへのアクセスが多く発生しています。また上海のみに限っていうと、使用言語における中国語(簡体字)とアメリカ英語の割合が5 : 5となっており、先述した各国の駐在員からのアクセスが多いのも特徴の一つです。これが反映されてか、その他都市よりもユーザー同士が情報交換を行うForumと呼ばれる掲示板へのアクセスが多い結果となっています。その他トップ10圏外ではありますが、Taxes in Japanへのアクセスも比較的多い傾向にありました。

[北京]

北京では、上海とは逆にOkinawaページのような南国へのアクセスが比較的多く発生しています。また、トップ10圏外ではありますが、Car Rental in JapanDriving in Japanのようにドライブに関わるページへのアクセスが一定数存在していました。これは今回ピックアップした都市の中で唯一北京にだけ見られた傾向です。その他、Sendaiページへのアクセスが15位に位置しています。私見ではありますが小説家の「魯迅」が深く関わっているのではないかと考えられます。「魯迅」が仙台へ留学していたことは学校でも必ず教わる事柄で中国国内でも広く知られており、こうした背景からか、訪れたことはなくても仙台の地名を知っている方が多くいらっしゃるようです。

[広州]

上海同様、Hokkaido関連のページへのアクセスが多く発生していました。広州だけに見られる傾向としてはSamurai[7位]、Hanabi[27位]、Onsen[41位]、Kimono[43位]のように日本文化・体験に関するページへのアクセスが存在している点があげられます。広州は香港・マカオに近い、いわゆる広東語文化圏に位置しており、より日本文化への関心度が高いことが関係していると考えられます。

 

まとめ

・ジャパンガイドへ中国国内の個人旅行者より毎月約35,000回のアクセスが発生しており、その内訳は一定の”知識層”と推測される中国人ユーザーと各国からの駐在員によって構成されている

 

・中国全体でみると、Cell Phones in JapanChopsticksといったページへのアクセスが多く発生しており、訪日意欲が高いユーザーの存在を確認できる。一方、Japan Photo Galleryページのような訪日初心者へのアクセスも発生しており、訪日意欲はあるものの、まだ実現できていないというユーザーも一定数存在していると考えられる

 

・アクセスの傾向は各都市の所在地や住民の構成により大きく異なる。たとえば南に位置し、各国の駐在員が多い上海の場合、自らのエリアにない魅力を求めてかHokkaido関連のページ、また英語を使用する必要があるForumと呼ばれる掲示板へのアクセスが中国内他エリアと比べ多く発生している

 

今後、ますます割合が増えることが予測される中国個人旅行者へアプローチを行う際には、都市ごとの特徴を事前に調査・把握し、都市別に施策を練ることが重要なように感じられます。