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令和4年度観光庁予算概要の注目ポイント

ローカライゼーション
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H. Oikawa

2022年01月07日

昨年12月末に観光庁から令和4年度の予算概要が発表されました。
こちらの記事では、私が目を通して気になった3つの注目ポイントをピックアップしてご紹介します。
より詳細をご覧になりたい方は、ぜひ観光庁HPから各事業についての説明が記載されている予算概要を確認していただければと思います。

さて、以下が本予算の注目ポイントとして挙げたい3点です。

  1. 国際観光旅客税財源は大幅に減少したように見えるが、実は該当する6事業に「訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業」の予算(前年度比で約2倍)を活用することで、事業継続を予定
  2. 新規事業「ポストコロナを見据えた新たなコンテンツ形成支援事業」で4.48億円を計上
  3. 「新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした観光産業の付加価値向上支援」に前年度比で5.48倍にあたる5.5億円の予算を計上
「令和4年度観光庁関係予算」(令和4年度観光庁関係予算決定概要p.1より)
上部が「一般財源」、下部が「国際観光旅客税財源」に分かれている。
「令和4年度観光庁関係予算」(令和4年度観光庁関係予算決定概要p.1より)
上部が「一般財源」、下部が「国際観光旅客税財源」に分かれている。

「一般財源」が合計141億5800万円となり、前年度比で約4%減少しました。
コロナ禍によって大きなダメージを受けている「国際観光旅客税財源」、いわゆる出国税による財源は、合計80億9500万円となり、こちらは前年度比で約69%減少しました。
総額は222億5300万円となり、前年度比で約46%減少しました。
前年度の予算は前々年度比で約40%減だったため、一見すると、この2年間で大きく予算総額が減少してしまったように見えます。

しかし別途、「令和3年度経済対策関係予算」として1203億100万円もの予算を計上しています。
後ほど詳しく述べますが、こちらの予算から「国際観光旅客税財源」を活用した事業に一部予算が使用されることになっています。
この予算を先述した「一般財源」と「国際観光旅客税財源」に加えると、総額は1425億5500万円となり、前年度比でわずか約3%減となります。
さらに、「新たなGo To トラベル事業」として1兆3238億5300万円、「東日本大震災からの復興」に7億7000万円を計上しています。

「令和3年度経済対策関係予算」(令和4年度観光庁関係予算決定概要p.2より)
「令和3年度経済対策関係予算」(令和4年度観光庁関係予算決定概要p.2より)
「新たなGo To トラベル事業」(令和4年度観光庁関係予算決定概要p.2より)
「新たなGo To トラベル事業」(令和4年度観光庁関係予算決定概要p.2より)
「東日本大震災からの復興(復興枠)」(令和4年度観光庁関係予算決定概要p.2より)
「東日本大震災からの復興(復興枠)」(令和4年度観光庁関係予算決定概要p.2より)

一見、予算が大幅カットされたように見える事業も実は・・・

「国際観光旅客税財源」の予算一覧を見てみると、令和4年度の予算が極端にカットされた事業が多数存在しています。
ただし、これらのうち、末尾に「(注1)」とついている事業が6つあります。
実はこれらの事業には、「(注1)令和3年度経済対策関係予算「訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業」も活用」されることになっています。
つまり、「(注1)」が付いている6事業に関しては財源が変わったのみで、多少予算規模は縮小するものの、来年度も事業継続ということになります。

一方、「文化資源を活用したインバウンドのための環境整備」や「国立公園のインバウンドに向けた環境整備」などは依然として22億円という大きな予算が割り当てられているものの、前年度比で半分以下の額に抑えられています。

新規事業「ポストコロナを見据えた新たなコンテンツ形成支援事業」とは

次に、新たに来年度から始まる事業に着目してみましょう。

「一般財源」の上から2番目に「ポストコロナを見据えた新たなコンテンツ形成支援事業」という新規事業があります。これは一体、どんな内容の事業なのでしょうか。

「ポストコロナを見据えた新たなコンテンツ形成支援事業」
(令和4年度観光庁関係予算決定概要p.4より)
「ポストコロナを見据えた新たなコンテンツ形成支援事業」
令和4年度観光庁関係予算決定概要p.4より)
「(参考)第2のふるさとづくりプロジェクト(「何度も地域に通う旅、帰る旅」)」
(令和4年度観光庁関係予算決定概要p.5より)

「(参考)第2のふるさとづくりプロジェクト(「何度も地域に通う旅、帰る旅」)」
令和4年度観光庁関係予算決定概要p.5より)

上記の事業概要を読んでみると、これは地域を繰り返し訪れるリピーターを増やすことを目的とした事業であることがわかります。
そのための取り組みとして、現在よりもより細かいマーケティングやコンテンツの高付加価値化などを通した「第2のふるさとづくりプロジェクト」を挙げています。
これらを通して、それぞれの地域にあった市場に的確にアプローチし、都市から地方への誘客、地方における消費単価向上を図ります。
実施主体としてDMO、事業者、自治体等に加え、地方運輸局も明記されています。
このことから、行政単位を越えて、より広域でも連携して実施していくことが期待されている事業であることがわかります。

予算が前年度比で約550%アップ、「新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした観光産業の付加価値向上支援」とは?

前年度比で予算が微増した事業さえごくわずかである今回の予算概要の中で、一際目を引く5.48倍の予算倍率を示す事業が「新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした観光産業の付加価値向上支援」です。

「新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした観光産業の付加価値向上支援」
(令和4年度観光庁関係予算決定概要p.8より)
「新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした観光産業の付加価値向上支援」
令和4年度観光庁関係予算決定概要p.8より)

上記の事業概要を読んでみると、これは宿泊業の新たなビジネスモデルの導入を促すとともに、地域内での同業者間・異業者間での連携を促す取り組みであることがわかります。
宿泊施設と同じ地域に展開する旅行事業者や施設などが連携することで新たな商品・サービスを生み出したり、泊食分離による魅力および生産性向上、バックオフィスのDX化支援などといったビジネスの効率化といった内容の事業が展開されることになっています。

「泊食分離」や「セントラルダイニング」といった聞き馴染みの無い言葉が並んでいます。
「泊食分離」とは文字通り、「宿泊者が宿泊施設を利用する際、宿泊施設は素泊まりとし、食事は地域の飲食店を利用すること」を指します。これにより、宿泊施設は宿の業務効率化やサービス向上に注力でき、飲食店は集客が可能となり、観光客にとっての宿泊体験と食事体験の向上も図ることができるというものです(より詳しい説明は、Livhub「泊食分離とは・意味」のページを参照)。「セントラルダイニング」とは地域が一体となり、地元の飲食店などが参加して営業する飲食施設のことを指します。
既に実施されている例としては、三重県鳥羽市相差地区の「オウサツダイニング・前の浜」や秋田県仙北市水沢温泉郷の「山の居酒屋 青荷庵」などがあります。

コロナ禍で多くの事業は軒並み予算削減も、改めて世の中における観光の重要性が感じられる予算編成に

最近はオミクロン株の世界的流行が伝えられるなど、観光業界にとってはまだもうしばらく我慢の状況が続きそうな気配です。
しかし、そのような逆風の中でも、「令和3年度経済対策関係予算」を活用することにより、国の観光業に対する大幅な予算カットは回避されました。

しかし、観光業は2019年時点で世界の雇用とGDPの約10%を生み出し、世界規模で右肩上がりの成長を続けてきました。
また観光は上記のような経済的影響のみにとどまらず、社会的、環境的にも世の中に大きな影響を及ぼす産業です。
出国税という大きな財源が大幅減少している中でこれだけの規模の予算が割り当てられていることから、改めて観光産業の重要性が感じられます。

今回の記事が、皆さんが観光庁予算概要を読み解くうえで、何かしらの参考になりましたら幸いです。
また、前回の観光庁予算概要の解説記事もご覧いただくと、令和3年度と4年度の予算概要の違いについて理解する上で参考になるかもしれません。
令和4年度も引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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