QRコードとスマートフォンの音声読み上げ機能を用いて、視覚障害をお持ちの方が主体的に情報取得できる取組のきっかけを作って頂いた、NPO法人神戸ライトハウスの太田理事長と和田様へ、アクセシブルコートについてインタビューを行いました。

神戸ライトハウスの太田理事長(右)と和田様(左)

【エクスポート・ジャパン】
2017年の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成金を使った実証実験から長きにわたりご協力頂いたことで、ようやく2020年6月からシオノギヘルスケア様の市販薬パッケージにアクセシブルコードが実装されました。
アクセシブルコードを用いたテキストを音声化する取り組みは、まだスタートしたばかりですが、ここまでを振り返ってお話を伺わせて頂きます。

Q1 最初に簡単な自己紹介をお願いします。
【太田様】神戸ライトハウスの理事長をしております、太田勝美です。40代で視覚に障害を負ったときに、自分が感じた困りごとを何とかしたいと思って、自ら法人を立ち上げました。視覚障害者のパソコン訓練と、パソコンマニュアルの音声CD化、治療師の保険請求(レセプト)の代行業務からスタートし、今は、視覚障害だけでなく、肢体不自由や精神障害の方も利用できる、パソコンを使った就労支援を行なっています。また、リラクゼーションサロンも運営しておりまして、美容矯正をメインに行っており、多くの女性のお客様に喜ばれております。

【和田様】就労支援の責任者をしております。和田香です。太田理事長のリラクゼーションサロンにお客として来て、理事長にお声掛けして頂いて、今一緒にお仕事をさせて頂いております。

Q2 太田様は中途視覚障害とお聞きしておりますが、普段ラジオやテレビ、周囲の方の読み上げにより情報を取得されている中で、情報を取得しづらい状況やどのような不便さがあるかについてお聞かせ下さい。

【太田様】目からの(文字)情報が無く、耳から入ってくる情報しかないので、健常だった時に得られた情報量とは格段の差があります。そのため、正直、諦めている部分は多いです。現状ではその時点では分からなかった事を、後で誰かに聞くか調べてもらうために、(メモが書けないので)事前の準備として、都度ICレコーダーに録音しておかないといけないのが不便ですね。
でも最近は、Googleホームに話しかけるだけで色々教えてくれるので、かなり便利になりましたよ。

Q3 実際にシオノギヘルスケア様のパッケージを手に取られてみて感想はいかがでしょうか?

【太田様】このパッケージはアイ・コラボレーション神戸様が企画した「アイデアソン・ハッカソン」で、シオノギ製薬様と一緒に取り組んだ事が始まりで、それから時間をかけて試行錯誤してきたので、最終的にシオノギヘルスケア様の実際の商品となったものを手に取った時には本当に感慨深いものがありました。QRコードが視覚障碍者にも触って分かるように凹みを作ること、箱の開封方法などは一番苦労したところですね。視覚障害だけでなく、高齢者、外国人の方にも必要な情報が取得できるので、本当に素晴らしいものができたと喜んでいます。

Q4 最初にQRトランスレーターをお知りになったのは和田様とお伺いしております。和田様が最初にお知りになった経緯などお聞かせください。

【和田様】「障害者差別解消法」が施行され、障害者に対する「合理的配慮」の一環として、弊社で印刷物に視力障害者用のSPコードを付帯する為の事業を推進しようとしたところ、どの訪問先も反応が非常に悪かったんですね。そんな中、ある訪問先で「使い道が視覚障害者に限定されるから需要がない。色んな人に対応したものであったら、付けてくれるところもあるんじゃないか?」とアドバイスを頂き、「WEB上で文字を音声で読み上げてくれるサービス」を探していたところ、普段お付き合いのある某事業所から、御社の存在を教えて頂きまして、これだ!と藁をもすがる気持ちで、問い合わせをさせて頂きました。

Q5 弊社代表高岡と初めて打ち合わせをされた時の印象をお聞かせください。

【和田様】Q4からつながっているんですが、問い合わせして30分後に御電話があって、それが高岡様でした。
こんなに即座に対応してくれた会社は初めてで、本当に驚きました。(大抵、断られるか無反応なので。)すぐ弊社にお越しになられて、こちらの要望を酌んで頂き、どうすればいいか真剣に取り組んで次々とアイデアを出して下さって、まるでスーパーマンが現れたような感じでした。

【太田様】熱意溢れる好青年って感じだったね。

Q6 視覚障害をお持ちの方がスマートフォンを使う割合は年々増加傾向にある一方で、障害をお持ちの方にはスマートフォンの利用にハードルを感じる方がいらっしゃると聞きました。太田様はガラケーを継続してお使いですので、ガラケーからスマートフォンへ変更しづらい理由などありましたら、教えてください。

【太田様】これまでボタンを押すこと、ボタンの場所を覚えることで電話を操作してきたので、指の触感の変化がない、タッチパネルの操作を覚えるのがとても難しく感じ、慣れるまでに時間がかかることもあって、なかなか変更しづらいですね。でも、今は視覚障碍者用のスマートフォン用キーボードが販売されているので、またチャレンジしたいと思っています。

Q7 様々な製品や印刷物へアクセシブルコードの利用が広がることで、実際の生活の場で利便性は増すと思われますか?

【太田様】今まで他人に頼らないと得られなかった情報が自力で得られるとなると、生活のし易さは格段に変わりますね。取得までの時間が短縮され情報量が増えるだけでなく、人に頼らずに自分で決断して行動できることが何よりも嬉しいし、日々の生活がアクティブになると思います。

Q8:今後、どういった製品へアクセシブルコードが拡大されることが、視覚障害をお持ちの方にとって役立つとお考えでしょうか。

【太田様】役所からの書類とか、銀行からのお知らせなど、個人的な事かつ重要な書類かな。ヘルパーさんや他人に見られたくないものもあるので。あとは日用品、食品にあると、買い物が他人に頼らず一人でできるようになるので、助かりますね。

Q9:現在、ユニバーサルデザインやダイバーシティな社会実現などのフレーズを聞くようになりましたが、太田様にとって視覚障害という障害だけでなく様々な課題を持つ人々が住みやすい社会とはどういうものだとお考えでしょうか。

【太田様】各々が「自分ごと」として捉えて行動していけたら、自分の「困りごと」を解決しようと色んなアイデアが生まれてくるし、そうなれば皆が住みやすい世の中になるんじゃないかと思います。

【和田様】日本は単一民族が多く、長い歴史の中で協調性を重んじてきたこともあって、この「多様性を受容する」という事自体が難しい環境にあると思います。日本社会はいまだに、違いを拒否する初期段階、または違いを無視するなど防衛的な反応を示す段階にあります。理事長が言われるように、まずは自分の事として様々な課題を考えられるかどうか、それが多様性を理解し、受容していくことに繋がっていくのではないでしょうか。

太田様、和田様お忙しい中お時間頂戴し、ありがとうございました。