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「鬼月(おにづき)」台湾のお盆?

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F. Izumi

梅雨明け宣言を受け、本格的な夏の到来ですね!
今回はそんな暑い季節に、ちょぴり涼し~くなる話のご紹介です。

みなさんは台湾の「鬼月(おにづき)」をご存知でしょうか?

「鬼月」とは、あの世から亡くなった人たちの霊(鬼)がこの世に舞い戻ってきて巷を徘徊する1か月間とされていて、中華文化圏(台湾、香港、中国など)では、旧暦の7月のことを言います。ご先祖の霊だけが人間界に戻ってくるならよいのですが、「鬼月」は地獄の扉も開くため、悪い霊も一緒に戻ってきてしまうのです。

この期間中、巷にあふれている「鬼」を刺激しないように台湾ではいろいろな禁忌(タブー)があります。
中でもポピュラーなものをご紹介したいと思います。

タブー1:遠出、深夜の外出(霊に出会いやすい)
タブー2:水遊び(水鬼に捕まって取って代わられる)
ブー3:夜の口笛(鬼や霊を招く)
タブー4:お箸をご飯にさす(霊が食べにくる)
タブー5:夜、服を干しっぱなしにする(霊が服にとりつく)
タブー6:夜、外を歩いているとき、誰かに呼ばれて、すぐ振り返る(霊に連れ去られる)
タブー7:お供え物を食べる(悪運を招く)
タブー8:寝床の先に風鈴(霊を招きやすい)
タブー9:昆虫やヘビを身勝手に殺す(霊の化身かも)
タブー10:結婚、引っ越し、車の購入(鬼月中は大きなイベントは適さない)

他にも、病院にお見舞いに行く回数を減らすとか、写真撮ることも要注意など、挙げればきりがなのですが、つまり、何もしない方がいい1ヶ月なんです。

鬼月に関する習俗やタブーは、もちろん絶対的ではありませんが、分からない力について、『ある』と信じた方がいい、『ない』と言い切るのはよくないという言葉もあって、この時期に入ると台湾の人たちはなんとなく自然に従います。

このようなことから、非日常的な行事一般を控える人が多く、この時期には台湾や香港などから日本を訪れる人も少なくなり、中華文化圏の観光客が数多く訪れるテーマパークなどでは、他の時期に比べて来場者が大幅に減少するなどの影響が出ることも珍しくありません。

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☆台湾プチ知識

その1:「鬼月」旧暦の7月→2016年は8月3日~31日。道教の思想。
その2:台湾では「鬼」という言葉を避けるため「好兄弟」と呼んだりもします。
その3:「水鬼」が一番恐ろしいとされています。
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一方では、「鬼月」だからこそ、行う行事もあります。

台湾の人たちが日常でもやっている「拜拜」(敬神)は鬼月には当然欠かせません。
旧暦7月1日の「鬼門開」、15日の「中元節」と31日の「鬼門關」には必ず「拜拜」をします。

そして、「鬼月」の中で一番重要なイベントは、旧暦715日で開催する「中元普渡」です。
個人宅では玄関先、お店やオフィスの前でも、お香やご馳走(肉・米・お酒・お菓子・果物・飲料など)を用意して、あの世のお金(冥紙)を燃やします。

鬼や霊を慰め、この1ヶ月間に人間の世を楽しんでもらい、人々に危害を与えないようお願いをする意味もあります。そして商売繁盛や家内安全を祈ります。
台湾の「鬼月」とは、日本のお盆のような習慣に近いかもしれませんね。

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☆台湾プチ知識

その3:その日は仏教の「盂蘭盆会(うらぼんえ)」を開催する日でもあります。この二つの祭事とも、霊を救うために、供物を準備しますので、宗教信仰も持たなくても台湾の人にとって、「旧暦7月15日は霊を救うためにお祈り(拝拝)する日」になります。
その4:供え物の数は全て単数
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さて、先ほど何もしない方がよい、と前述しましたが、実際のところはというと、、、

夏のビーチは海水浴やマリンスポーツを楽しむ人でいっぱいだったりします(笑)
日本と同じく、昨今はそんな習俗なども薄れてきており、特に若い人たちはやはり海で楽しみたいという人が大部分を占めています。
ご年配の方々は古き伝統を残しつつも、若い人たちは今のスタイルを楽しむ方を選んでしまうのでしょうね。

くれぐれも霊の怒りだけは買わないように、この時期に台湾へいかれる観光客のみなさんも、〝郷に入っては郷に従う〟で、「拜拜」だけは忘れないように気をつけましょう!

自分自身もまた、亡き人に思いを馳せることや先祖を敬う心を大切にしていきたい、と改めて思います。