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「目を細める」は、どういう意味でしょうか?

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F. Walter

こんにちは、グローバル事業部のフランクです。今年から翻訳について専門的な立場でブログを書いていきますので、よろしくお願いします。

さて、「目を細くする」という物理的な意味があるが、「ほほえみ、笑う」という意味もあるでしょう。

それでは英語に翻訳する場合はどの意味が相応しいでしょう?
それが物理的な意味だとすると「to narrow your eyes」のような言葉は良さそうだね。
しかし、英語では「to narrow your eyes」は逆に「疑う、睨めつける」という意味もある。

例えば「走ってきた孫に「ばあば大すき!」といわれて、ヨネは目を細めた」という文章を英語に翻訳すると、「Yone’s grandson ran up to her and said, “I love you Baba!” and she narrowed her eyes.」は表面的に正しいといえるものの、完全に真逆な意味を表している。英文のニュアンスは、ヨネは孫を狙っている。

ということは、日本語の文章の全体の意味(文脈)を確認することが必要。文章を読むと、「目を細める」の二番目の意味の方が合っているため、「Yone’s grandson ran up to her and said, “I love you Baba” and she smiled.」は正しい。

翻訳という業務ではこういう問題が意外と多い。まったく同じ言葉なのに、意味が確実に違う。そして、インターネットで検索しても適切な英語がどれをさすのかわからないときが多いことで、ネイティブスピーカーに翻訳を頼むことを考える人が少なくないと思う。確かにそれは間違いではない。

だが、ただネイティブスピーカーだから大丈夫だとは言えない。

英語ネイティブは確かに英語のイディオムが分かるものの、日本語の慣用句やことわざはどうすれば良いでしょうか?翻訳者は日本の文法(国文法の語彙分野)と馴染みがないと本来の意味がわからない。言葉にはニュアンスがあり、翻訳する場合そのニュアンスを理解しないと不自然な文章になり、意味が変わってしまうケースがある。

英語のライティングに馴染みのないネイティブスピーカーは質のいい翻訳ができないと言える。なぜなら、英語の基準ライティングが分からないから、文法が正しくても、英語としておかしいことがわからない。

例えば、この文章を分析しましょう。
「Ride the curvy roads of the SHIMANAMI KAIDO and see the views of SETOUCHI.」この文章を英語ネイティブが読めば、意味がすぐ分かると思う。しかし修正が必要な箇所が実は三つもある。

まず、「curvy roads」という言葉です。
意味は想像できるが、言葉の組み合わせとして聞いたことない。もし英文が正しいかどうか確認したいときにGoogle Ngram Viewerというグーグルのサービスは一番のお勧め。
Google Ngram Viewerはある言語資料(Google Books)を通じて、言葉やセリフの利用率を示すソフト。下のスクリーンショットを見ると、「curvy roads」より「winding roads」が「曲路」の方が相応しいとわかる。

大文字の使い方

英語では文章の中で大文字と小文字が混ざることはありがちな間違いである。確かに省略しているもの(NHK, IBM, UNESCO)は大文字にしないといけないが、それは略語だから。

Nihon Hoso Kyokai = NHK,

International Business Machines= IBM,

United Nations Educational Scientific and Cultural Organization = UNESCO

「SHIMANAMI KAIDO」は日本語では、いいかもしれないが、英文では間違い。
「Shimanami Kaido」と書くべき。

しかも登録商標のマーク(™、、)も一般的に使わない。もちろん画像になっているロゴやマークは別だが、いい英文にするためにはない方がよい。分かりやすくするとしたら、次の日本語文書と同じようなものになる。

「Appleは삼성より市場シェアが高い」

韓国ではサムスンの正式名称は삼성。しかしこの書き方は日本語でもちろん不自然で、英文でもこういうのはいけない。日本の例を挙げると、伊勢丹の英名はIsetan。伊勢丹のロゴは「ISETAN」として書いてあるが、英文では本来はIsetanの方が正しい。

最後に「see the views」というセリフもよく考えたら、分かりづらい。なぜなら、それは二重表現(同語反復)であるから。言葉通りに翻訳するとよくわかると思う。「見ものを見る」考え方によっては、「風景を見る」にも訳せるが、「view」と「see」は両方「見る」という動詞として使えます。もし、「風景が美しいから見てほしい」というニュアンスを表したいのであれば、「view」を「beauty」に変更するほうがいいでしょう。

結果として
「Ride the winding roads of the Shimanami Kaido see the beauty of the Seto Inland Sea.」に直すことができる。

このように、一文であっても、気を付けなければいけない点が多数ある。英語のネイティブスピーカーであれば、上記に述べてきた点を確認できると思いたい。しかし、もっと難しいポイントや長文を確認していく作業になるのであればそう簡単にはいかない。英語ライティング能力が低いと何処が問題なのかわからない可能性が高い。

「ネイティブ+」というコンセプトを紹介

「ネイティブ+」では、翻訳者は対象言語を母語とする方からさらに絞った、自分の母語でライティング教育を専門的に受け、文書作成の高度なスキルがある方を指す。まず、翻訳作業が始まる前に、翻訳結果物に対するトーン、訳し方、スタイルについて決めて、スタイルガイドに記入することは大切。そうして、出来上がったスタイルガイドに従って、翻訳を行う。終わったら、別のネイティブが出来上がったものを確認・修正し、納品物のデザインと合わせて、翻訳文を編集する。それが、納品物になる。

箇条書きにすると「ネイティブ+」という翻訳フローは以下の通り:

①トーン、言葉遣いを設定し、スタイルガイドを作成

②英語ライティングスキルがある翻訳者が翻訳

③別のネイティブが校正、校閲、編集

④クライアントのコメントに対応

このプロセスを踏むことにより、文章そのもののクオリティが上がり、ブランド力が上がり、企業評価が上がることになる。今後ますますグローバル化が進む中、自社の競争力を高めるには、自分たちのビジネス、ビジョン、歴史をどのように伝えるかが最も重要である。そうして、海外に円滑なコミュニケーションを図り、よりスピーディーにビジネスを進めることで優位に立つことができるであろう。

専門的な知識のあるネイティブ翻訳者に良いライティングを頼むことが重要である。そういった点にコストをかけることを惜しまないことで、世界の扉を開ける地点に立つことになる。

正直なところ、日本は世界でも間違った英語の表現を使っている国として知られている。専門的な立場からの考えだが、日本の低い英語力は大きな弱点だと感じている。グローバル化が進む中で自社のビジネスを英語で伝えない日本の会社はますます困ることになる。グローバル向けのウェブサイトでおかしい英語が書いていたら、その点で信頼性を疑う。たしかに日本語は非常に特徴がある言語であることを認識しているけれど、英語もそうであることを理解してほしい。どれだけ日本語のコンテンツがよくても、翻訳が下手だとしたら、せっかくのいい物が伝わらなくなる。