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ネイティブコンサルティングとは? 外国人視点を活かす新しいアプローチ

ローカライゼーション
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K. Wozniak

近年、海外市場への展開やインバウンド事業の強化に取り組む日本企業が増えています。そのようななか、弊社エクスポートジャパンが日常的に使用するキーワードとして、「ネイティブコンサルティング」や「ネイティブ・外国人目線」があります。その本質や特徴とはどういうものなのでしょうか?

一言で言いますと、日本企業の強みを最大限に活かしつつ、海外市場で“本当に伝わる”形に磨き上げるのが、ネイティブコンサルティングの役割です。

この記事では、ネイティブコンサルティングの基本的な考え方や、具体的にどのような強みを持っているのかについて、エクスポートジャパンの経験をもとにご紹介していきます。

ネイティブコンサルタントの人物像

外国人であるということだけで、その人の意見がコンサルティングとして成り立つわけではありません。

コンサルタントになるためには、まず、様々な分野での専門知識が必要で、出発点として日本市場とインバウンドへの状況理解は必要不可欠となります。毎年観光庁をはじめ、全国や自治体別の観光客データ、関連資料が発表されているため、そのデータのインプットが非常に大切です。その知識には、日本文化、歴史、言語への理解がなければ、日本人にとって重要な魅力ポイントが正しく伝わらないため、その観点からも重要視されています。

そして、これらの知識に加えWEB業界、マーケティング・ブランディングの理解が求められます。

多言語WEB制作の分野

まず、WEB制作については、基本的なWEB制作・運用の知識が必要ですが、それ以外にペルソナ設定の考え方など、有効的なWEBマーケティングを行うための基礎がなければ、良いウェブサイトは作れません。

また、非常に重要なのは、UI/UXの理解と知識です。最終ターゲットとなる外国人ユーザーの行動の理解がなければ、設定した目標を達成するのは難しいと思われます。具体的にどういうことを指すか、事例を挙げつつ、深掘りをしていきましょう。

ウェブサイトを制作する際、掲載したいコンテンツは事前に決まっていることがほとんどです。問題になるのは、その構成です。

どの内容をTOPページに打ち出し、下層ページとそのコンテンツをどのように配置するか、などはユーザーエクスペリエンス観点では非常に重要になります。全体イメージをしっかり持ちつつ、各ページのコンセプトや導線を考えるのは、サイトの設計担当の役割です。インターフェースのレベルだけでも、文字が重要視される日本的なサイトと、深く読まなくても、ビジュアル面を重視している海外的風のサイトは、考え方が根本的に異なるところが多く存在します。

そこで、ネイティブコンサルタントの役割は、日本的なコンテンツを海外向けにローカライゼーションを行うこととなります。テキストだけではなく、レイアウトやデザイン、それらの全てを目的達成に繋がるために活かすのは多言語WEB制作の基本です。

事例:3クリック以上のサイト構成を、3クリック以内へと改善するのも、要件定義中にネイティブコンサルタントの役割となっています

幅広いWEBマーケティングの理解

これまでの話はWEB制作が中心となりましたが、プロモーション動画作成、SNSアカウント運用など、様々なプロジェクトを担当し、それぞれの動きのコーディネートを行うことも少なくありません。

プロモーション動画の分野では、全体的なコンセプトを提案し、具体的なシナリオ作成の段階からコンサルティングを行います。その後も、必要に応じてキャスティングの際にコンサルティングを行い、撮影の時にも同行し、編集まで動画制作に参画するのが基本的な流れとなります。その中でもブランディング・マーケティング戦略を重視し、何を、どの観点から紹介すれば、外国人視聴者の関心をひき、短い動画の中でも理解が深まる紹介ができるか、ということがコンサルティングの基礎になります。また、こちらに関しても、ターゲットとなる国・地域の市場、文化の理解が非常に重要となるため、データだけではなく、多言語の動画・映像のリサーチを踏まえた方が、プロモーションの目標達成に繋がると考えております。

多言語動画制作の考え方については、下記の記事をご参照ください:
海外向けのプロモーション動画企画入門

SNS運用に関するコンサルティング

近年、ほとんどの人がプライベートでSNSを利用しています。しかし、プライベートで使うのと、公式アカウントの運用は当然異なります。そのため、この分野に関しても、プロとしての知識が必要です。

無論、SNSの全種類、全ターゲット向けのプロモーションを一人で把握するようなことは現実的ではありません。中国で一般的に使われているWeChatやRED、そのトレンドや特徴を把握しやすいのはやはり中国出身の方で、米国発SNSのFacebookやInstagram、LinkedIn等は欧米出身のネイティブコンサルタントの領域となります。

コンサルタントの主な役割は企画への参画となりますが、そのためにも、SNSの裏側、例えば、Facebook・InstagramであればMeta環境、Meta Business Suiteの理解も必要です。というのは、通常投稿、リール動画、ストーリーズなど、様々な投稿種類があるため、それぞれの特徴や役割を理解し、正しく使い分けるのはSNS運用の基本となります。どの投稿でどのような情報が伝えやすいか、どうすればリーチが広くなるか、といったことを把握していれば、より効果的なコンサルティング・提案ができるでしょう。

次に、各SNSの特徴とトレンド、アルゴリズムについての理解も求められます。言うまでもありませんが、日本のSNSで人気のあるコンテンツは、その中身から動画編集、文字の使い方まで、海外メディアと異なる様子が多いです。また、ウェブサイトにも増して、トレンドが変わるスピードも凄まじいので、良いコンサルタントは常に最新情報にアンテナを立てる必要があります。(もちろん、WEB制作の分野でも、最新技術、近年だとAIのソリューション、デザインのトレンドについて定期的にインプットしないといけませんが、SNSの流行の方が激しく変わる傾向にあります。)

日本向けと海外向け投稿の違い

なお、LinkedInのように、日本でまだ情報発信媒体として一般的に使われていないものの、海外では有効活用できるメディアも近年登場しているので、そのような情報をクライアントに提供することも重要だと思われます。


(LinkedInの有効活用について気になる方はこちらをご参照ください:
欧米向けのB2BのSNS – LinkedInのポテンシャル

ローカリゼーション観点

コンサルタントはライターではありません。英語・中国語などができる、英語圏・中国語圏の出身者であったとしても、英語ライティングができるとは限りません。日本人の誰もが綺麗な日本語文章が書けるわけではないのと同様です。それでは、コンサルタントはどんな役割を果たしているのでしょう。

コンサルティングの段階では、ライティングではなく、その前の段階になる、外国語の理解が重要になります。ウェブサイトであれば、テキストの量、構成による読みやすさ、そのズレによる問題など、サイトのドラフト、ワイヤーフレーム段階から抑えるべき点があります。また、ライティングの依頼に関しても、日本語で伝達するより、最初から英語・中国語等のキーワード、抑えたいポイントを依頼した方が、コンサルタントが伝えたいイメージ・ニュアンスと外国語のライティング内容がより一致した仕上がりになります。SNSの投稿文章、動画の字幕など、それら全ても外国語の理解から成り立っているため、コンサルティングの段階からその観点を重視しています。

伝われば、それだけで十分、と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、本当に伝わっているのでしょうか? 判断は難しい分野ですが、簡単な事例を見てみましょう。

とある水族館の注意書きですが、「水槽の縁に上がらないでください」は「Please do not ride in the tank」に間違って翻訳されていました。日本語が分かれば、おそらく「乗らないでください」という言葉選びが「do not ride」になりますが、外国人からしたら、それは「何となく伝わるレベル」ではありません。日本語に例えると、「この水槽は乗り物禁止」のような感覚になります。

そのような誤訳の予防だけでなく、もっとも伝えたいメッセージ・思いを正しく伝えるためには、ネイティブコンサルティング・ネイティブライティングが必要不可欠と言っても過言ではありません。

もちろん、ネイティブによる文章はその言語のネイティブだけにとって分かりやすいわけではありません。特に英語の場合、第二言語として習得しているユーザーが非常に多いため、日本語を通じて翻訳した英語ではなく、外国人目線の英語が非常に重要です。

例えば、日本語のマーケティングでは、「W効果」という表記は良く見かけますが、漢字・かなの中であれば、英語文字が確かに目立ちます。しかし、英語以外は、「ダブル」の意味がそもそも通じないだけでなく、アルファベット自体はあまり目立たないので、数字の「2」を大きく記載した方が効果的となります。

取材の大切さ

ウェブサイト・SNS上の紹介に関しても、外国人として訪問を行い、現地取材を通じて分かることも非常に多くあります。もちろん、リサーチや支給資料・データをもとにコンサルティングを行う場合も頻繁にありますすが、観光系や体験型コンテンツをはじめ、深掘りが困難なケースも少なくありません。

そのため、コンサルタントには行動力も求められます。毎回、というわけではありませんが、必要に応じて、クライアントの施設、観光地、紹介する予定の場所への訪問、現地取材、撮影現場への同行が発生する場合が少なくありません。その時は、積極的にコミュニケーションをとり、必要であれば、写真なども撮りながら、理解を深めていくのが主な仕事内容となります。そうすることで、隠れた魅力、外国人に刺さるようなもの、役立つ情報、今後のコンサルティングと実際の制作に必要となる素材をたくさん取得できることに繋がります。

いうまでもないかもしれませんが、支給資料、ネット上の情報による紹介と、取材を基にした紹介では、その幅や深みに大きな差が生じます。外国人である上、ネイティブコンサルタントは情報提供のプロでもあるので、そのスキルを活かすためには、予算が許す限り、取材を含めたプロジェクトの企画がおすすめとなります。

国内イルカと泳ぐ体験の様子

コンサルタントの企画力

なお、狙った結果にならない際、その原因が分からない場合があれば、課題がはっきりしているプロジェクトもあります。その場合、課題点を明確にするだけでは、解決にはなりません。そのため、ネイティブコンサルタントには企画力も求められます。

WEB制作に関しては、前述のUI/UX知識や、WEBマーケティングの理解を活かし、サイトの改善を積極的に提案するのもコンサルタントの役割です。多くの場合は、「0を1にする」力も必要です。サイトに掲載できる新規コンテンツから、クライアントのニーズに合わせたサイト全体の企画まで、様々な分野において説得力のあるアイディアが必要です。プロモーション動画など、他のプロジェクトについても同様です。

また、SNS運用の場合、全体的なコンセプト等の主な役割だけでなく、個別の企画を提案し、必要に応じて撮影同行や制作時のコンサルティング、投稿内容のチェックと、業務内容の幅がかなり広いです。そのため、クライアントのニーズと他のチームメンバーの意見をヒアリングしつつ、自分の意見、アイディアをしっかり持つことも大切となります。そして、逆に言いますと、ここまでできていれば、会社の中で独立したコンサルタントになります。

更に、WEB領域を超えた取り組みが必要となる場合も少なくないです。特に、観光系のコンテンツになると、体験や受け入れ体制など、いわゆる「旅ナカ対策」がよく求められます。印刷物から、WEBとリアルの架け橋になるようなソリューションなど、こちらに関しても幅がとても広いです。そのため、コンサルタントは、観光客の行動パターンを理解し、外国人目線で判断をしつつ、ベストなソリューションを導き出すことも必要となるプロジェクトも多いです。

旅ナカ対策ソリューションの事例:
旅ナカ対策:QRT使用による外国人受入れ体制

ネイティブコンサルティングによるメリット・効果

これまではコンサルタントの人物像やネイティブコンサルティングの内容について説明しましたが、ネイティブコンサルティングの導入によって、どんな効果が得られるか、という点についても見ていきましょう。

WEB制作・SEO対策

WEB制作の観点からもっとも分かりやすいのは、SEO対策です。要件定義の段階から、対象言語の表記をベースにコンセプト、サイト構成を作成することで、多言語向けのデザイン、そして多言語のネイティブライティングと組み合わせることが可能になり、その結果、Googleなどの検索エンジンから高く評価されるサイトになります。しかし、それだけではありません。

エンゲージメントとユーザー満足度アップ

ユーザーのデータから見ると、最も上がりやすいのは、エンゲージメントです。WEBサイトの場合、滞在時間の延長、下層ページへのアクセス増加、ビジネスにおいては、お問い合わせの増加など、ユーザーの満足度が具体的な数値として現れます。そのため、海外での認知度向上、専門分野・センシティブな話題への理解の深掘り、オーバーツーリズムのような明確な課題への対策、質の高い顧客、訪問者の獲得など、明確な目標があるプロジェクトには非常に効果的なソリューションとなります。

また、プロモーション動画においてのマーケティングの観点では、動画の内容が理解しやすく、親近感がわきやすい内容の方が成功に繋がりやすいものになると思われます。

フォロワー拡大からリアルアクションへ

SNSの場合、フォロワーの急増が最も分かりやすい実績になります。それぞれの投稿のエンゲージメントも高く、いいね、シェア、保存が多い結果も見られます。最後に、非常に重要なのはユーザーからのコメントです。フォロワーやいいねとともにコメントが増加する傾向もありますが、コメントの内容も非常に重要です。投稿内容は、実際役に立つ情報として評価されていれば、アルゴリズム上評価されるだけでなく、ユーザー側からもポジティブなコメントや、詳細な質問が届くようになります。そうすることで、SNSを通じて、リアルでの行動に繋がりやすくなります。

まとめ

WEB業界の「コンサルタント」といっても、WEBセキュリティやマーケティング戦略など、幅がかなり広いです。しかし、その中でも「ネイティブコンサルタント」という肩書はかなり特殊で、珍しいと思われます。本記事では、ネイティブコンサルタントの様々な役割を紹介させていただきました。もちろん、それは全て、1人の人間だけの役割ではなく、同じ会社に在籍している、複数のコンサルタントの人物像となります。人によって、それぞれの専門知識、経験があるので、案件とスタッフをうまくマッチさせたうえで、コンサルティングを行うのは成功の秘訣でもあります。最後に、多言語のプロジェクトにてコンサルティングを行うことによって明確な結果も出るので、日本人目線では違いが分からなかったとしても、外国人ユーザー側から目に見えるデータが必ず届きます。

もし、プロの知識を持ち合わせている外国人ネイティブコンサルタントにご興味のある場合は、まずはお気軽にお問い合わせください。