
海外向けのプロモーション動画企画入門
制作・開発デジタルマーケティングの分野では、テキストや画像だけでは製品やサービスの魅力を十分に伝えきれないことから、動画制作を検討されている企業・自治体が近年増えています。また、そのプロモーションは国内向けに限らず海外向けとなることも多く、その場合は文化や言語の違いを乗り越える必要があるため、ターゲット市場に合わせた戦略的な企画が求められます。
プロモーション動画は、視覚的かつ感情的に訴えかける力を持っており、強調したいメッセージを短時間で強く印象づけることができます。しかし、どんなに素晴らしいコンテンツでも、マーケティング戦略がしっかりしていなければ、その効果は半減してしまうでしょう。
本記事では、海外向けプロモーション動画を作成する際に重要な「企画」の役割に焦点を当て、その成功を引き出すための主要なポイントを解説していきます。
企画前のリサーチ
国際社会においては、国ごとにCMなどの広告内容が大きく異なるのが一般的です。一方で、グローバルマーケティングのキャンペーンが世界的に成功している事例も少なくありません。その中心となっているのは知名度の高いブランドに限らず、共感しやすいテーマを用いた事例も多く見られます。そのため、ターゲットを絞り、特定の外国市場に合わせた企画を立てるか、より広く関心を引き、共感できる内容を目指していくか、という2つの方向性が考えられます。そして、両方に欠かせないのが、英語(もしくは現地語)をベースとしたリサーチです。
アイディアを探すという意味でも、類似のテーマや業界が海外、もしくはターゲットとしたい国・地域でどのように紹介されているかは必ず確認するべきだと考えております。もちろんその目的は、他社の動画を模倣するためではなく、何が重要視されているかということを見極めるためです。例えば、技術が強調されているのか、それともユーザーのストーリーが主軸になっているのか、ナレーションの有無、使用されるBGMなど、参考になる要素は多くあります。更に、言語の観点からも、どのような表現が使われているか把握することで、外国人ネイティブメンバーが多く在籍している会社ならではのアプローチも可能です。
もう一つの重要なリサーチの軸は、プロモーションのテーマそのものです。プロモーションの対象である製品やサービスの特徴や強みを理解せず、プロモーションを行うことはもちろんできません。それに加えて、「どの特徴や強みが海外の視聴者にとって魅力的に映るか」という観点からの見極めも必要になります。この点においては、国内向けのプロモーション実績が役立ちます。日本人が何を魅力と捉えているのか、実績としてすでに上がっているデータを参考にしつつ、同じ論理で海外の視聴者にも受けるのか、果たしてそうでないのか吟味すると良いでしょう。
海外でバズった日本の事例を参考に
コンサルタントとしての視点になりますが、すべての企画は過去の前例を基に成り立っており、「何もないところからは何も生まれない」という考え方が基本になります。つまり、ゼロから何かを生み出すというより、過去に成功した動画、特に海外で話題になった日本の事例などをリサーチし、視聴者の反応や関連記事などを分析することで、多くの学びを得ることができます。
こちらの記事を見てみましょう:
6 Unique Japanese Commercials You Should Watch
この中の事例を参考にするだけでも、大きく2つの傾向が見えてきます。まず1つ目は「ユーモア系」とも呼べるタイプの映像です。代表的な事例としては、UHA味覚糖による「さけるグミVS長いグミ」のCMシリーズが挙げられます。まるでドラマのように展開されるユニークなシリーズとそのユーモアが海外でも話題となり、SNS上で広くシェアされるキャンペーンとなりました。ただし、このような「ユーモア系」の内容に関しては、基本的に国内向けに制作されており、偶然一部が海外で話題になるケースが多いため、効果の予測がしにくい場合が多いです。また、扱う製品やサービスによっては、ユーモアを中心にプロモーションを行うことが難しい場合もあります。
そのため、もう一つの傾向である「誰でも共感できる世界共通の価値観」を中心としたプロモーションの方が、参考にしやすくおすすめです。上記の記事では、「マルコメ 料亭の味 米麦合わせ ふたりでおやすみ篇」が、その代表的な事例となります。家族の日常を舞台に使うことで、誰でも共感できるストーリーとなり、英語字幕を付けるだけで世界中から視聴され、広く評価されるCMとなりました。同様の事例は他にも多くありますが、近年の代表例としてはマクドナルドのSNS向けの広告映像が挙げられます。この映像では、「特別じゃない、しあわせな時間。」という短いメッセージが用いられています。世界中で人気の高い「Lofi Girl」のYouTubeチャンネルのトレンドを活かしつつ、家族の時間を描いた映像が世界中で話題を呼びました。わずか21秒程度の長さで、セリフやテロップは一つもないのに、言語や文化の壁を超えるようなストーリーが描かれています。この事例でも、「家族」という普遍的に理解されやすいテーマが中心となっていて、共感しやすい内容となっています。他にも、「夢に向けて頑張る」、「頑張っているからこそ休息が必要」といった、どこの国でも理解できるストーリーを中心に据えることで、日本らしい環境が舞台になっていても、海外の視聴者に伝わりやすくなります。
裏を返せば、日本独自のトレンド、国内で流行ったお笑いのネタなど、前提知識を必要とする内容は、海外向けに編集するのは困難、というケースがほとんどです。そのため、ストーリーに迷った時は「万国共通で誰にでも伝わるか」という考え方を基準にすることでより適切なコンセプトを立てやすくなるでしょう。
独自のアイディアを加える段階
ここまでの内容が整理できたら、次は対象となる製品やサービスを中心にプロモーション動画のテーマを決め、独自のアイディアでカスタマイズしていく段階に入ります。同じモチーフでも、見せ方によって表現は無限に広がります。見せ方や表現を試行錯誤するためのおすすめの進め方は、実際の人物や体験をモデルにするという考え方です。実際の人物や体験をモデルにしてストーリーを構築することで、より現実味のある内容につながるでしょう。その際は、動画を制作するチームメンバー以外の方にも声をかけて、実際にターゲット層に近い人の体験談を聞いてみることも有効です。
もちろん、観光地や製品など、プロモーションのジャンルはさまざまですが、魅力を伝えるには映像でイメージを見せるのが最も効果的です。迷った時は、このような現実的なアプローチを取るのが最もおすすめです。
ただし難点として、「アイディアが思いつかない時は、こうすればきっとうまくいく」という万能のレシピは存在しません。クリエイティブな作業である以上、リサーチ結果、経験、ニーズ、ターゲット、プロモーションの目標、課題、対象となる製品やサービスの特徴やアピールポイントなど、様々な要素を総合的に検討して企画を組み立てる必要があります。そのため、こうした場面では専門家の力が非常に重要となります。このような状況下でも、企画提案を積極的に行えることは、エクスポートジャパンの大きな強みの一つです。今回ご紹介したプロセスを踏まえた、海外向けの動画プロモーションに興味がありましたら、ぜひご相談ください!
動画の“使い道”を見据えた企画を
ストーリーの構成と同じくらい重要なのが、動画を掲載するプラットフォームや投稿の形式です。たとえば、単独での公開を想定しているか、シリーズ化が予定されているか、という観点も企画段階から考慮すべき重要なポイントです。単独の場合は、1本の動画内でストーリーを完結させる必要がありますが、シリーズ形式を想定している場合、全体を通して一貫したテーマ設定をすることが求められます。この違いは、シナリオだけではなく、コンセプト設計にも大きく影響するため、早い段階で方向性を決めておくのが望ましいです。
また、動画をどのプラットフォームに掲載するのか、そしてどう活用するかという点も同時に重要です。例えば、使用目的がYouTubeチャンネルや公式サイトへの埋め込みだけだとすると、数分以上、あるいはそれより長尺の動画でも問題ありません。しかし、SNSでの投稿や広告への活用を想定する場合は、より短く編集した複数のバリエーションを用意する方が使い勝手が良くなります。また、多言語対応についても、たとえばYouTubeには字幕ファイルを個別にアップロードできる機能があるため、映像内に直接字幕を載せるよりも柔軟に運用できます。加えて、SNS用にトリミングした短尺動画には別途字幕を追加するなど、視聴者の言語や視聴環境に合わせた工夫が可能です。
まとめ
WEBマーケティングや海外向けのプロモーションにおいて、すべてのニーズにフィットできる単一の方法論は存在しません。しかし、動画企画を成功させるためには、単に思いつきで動くのではなく、コンセプトを決める前から、リサーチやデータ分析をしっかり行うことが非常に重要です。もちろん、それぞれの母国語で他国のマーケットをリサーチすることは簡単ではありません。そうした面で、ネイティブスタッフが多く在籍していることは、エクスポートジャパンの大きな強みです。外国人のクリエイターだから、より良いアイデアを生み出すわけではなく、リサーチやノウハウ、根拠に基づいた提案を、日本で実務経験を積んだプロとして提供できることが特長です。
また、動画を掲載するプラットフォームのアカウント運営まで目線を広げることも重要です。ただ動画を制作し公開するのではなく、その動画が掲載されるプラットフォームが普段誰に見られていて、今後はどのようなターゲットにフォローしてもらいたいのか、長い目で結果を出し続けるにはこれらを見据えたより広域な戦略を持ち、WEBマーケティングに取り組む必要があります。もし、本記事の内容にご興味をお持ちいただけた場合や、より具体的なプロモーションをご検討中でしたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。