印刷物のユニバーサル対応

WHO(世界保健機関)の統計によると、視覚に障がいを持つ人は、全世界で約2億8千5百万。総人口の約4%にあたります。また、パラリンピックにおける公式競技22種目の内、10種目の競技は視覚障がい者を対象にしています。

では、視覚に障がいを持つ人に情報を届ける手段は? 真っ先に思いつくのは点字による情報提供でしょう。しかし、多くの人は、生まれつきではなく中途での疾患等によって視力を失う事がある為、国内の統計によると、点字を読める人の割合は視覚障がい者全体の13%弱とされています。また、その点字を外国語に対応させる場合、同じ配置の点が日本語では「い」、英語では「B」になってしまうなど、言語によって異なってしまう事も課題です。(それでも、点字による情報提供が重要である事は間違いありません。)

これらの課題を解決する手段として、弊社では、視覚障がい者の自立支援団体である神戸ライトハウスと協力して、QRコードを用いた音声読上げによるソリューションを検討してきました。その仕組みを以下でご説明します。

まず、現在のスマートフォンには、障がいを持つ人が使用し易いように(iPhone、Androidそれぞれで)アクセシビリティを高める機能があり、その設定を行う事によって表示された画面上にあるテキストを音声で読み上げる事が可能です。(以下はiPhoneによるVoiceOverの設定方法)

iPhoneでのボイスオーバー設定

つまり、スマートフォンに表示されたテキスト情報であれば、そこにある文章を音声で聞くことは難しい事ではありません。そうすると、次にどうやって必要な情報をスマートフォンまで運ぶのかが課題になります。

視覚障がい者が自分で必要な情報を得ようとする場合、Siriなどを使って音声でスマートフォンに命令を出すことも出来るでしょう。但し、情報を伝えたい側が発信する公的なお知らせや、現実の世界で受け取った印刷物に書かれた情報などを知りたい場合、身近な人にお願いして読んでもらうという行為が必要になります。しかし、そこにQRコードが付いていれば、スマートフォンに付属しているQRコードリーダーを使ってそれを読取り、ボイスオーバー機能(AndroidではTalkBack機能)を使って音声で情報を受取ることが可能です。

QRコードの読取り動作

現在、日本全国の視覚障がい者支援団体に協力を頂いて行っている実証実験によって、例えばパンフレットなどにつけたQRコードであれば、その大凡の位置さえ分かれば、例え全盲の方でも、対象から20cm程度離してスマートフォンをかざすことで、100%に近い確率でそのQRコードを読取ることが出来るという事が分かってきました。

但し、その際には以下の3つの条件が必要です。

  • 通常の採光が取れた場所であること
  • QRコードが一定以上の解像度と大きさで印刷されていること
  • 印刷物のどの辺りにQRコードがあるかを認識できること
  • 上記の1番目については外的要因に左右されますが、2番目については最低基準を定めておくことによって解決が可能です。そして3番目については、印刷物の右下を1cm角程度でカットする(下写真例の)ルール設定により、紙の裏表の認識も併せて可能になります。

    右下角をカットしたパンフレット

    そして、QRコードを発行するプラットフォームとして、PIJIN社のQR Translatorを使用すれば、コードを読み取った際に、ユーザーが使用しているスマートフォンの設定言語に合わせて翻訳情報を(多言語で)表示させ、音声合成によって読上げることも可能です。

    読取った情報を英語で表示

    こういった技術の進歩と視覚障がい者のスマートフォン利用の増加によって、世界中の印刷物を、言語と視覚障がいの2つの点でバリアフリー化する周辺環境が整ってきました。その上で、現在、世界で普及している各種のQRコードリーダー(アプリ付属のものも含む)を利用してみると、必ずしも視覚障がい者にとって使いやすいものではありませんでした。そこで弊社自身でも、視覚障がい者の利用に特化したQRコードリーダーアプリをNEDOの支援によって独自開発し、β版を6言語で世界中に無償リリースしました。

    VIPコードリーダー

    App Storeからダウンロード

    Google Playからダウンロード

    これら全体のソリューションによって、通常の印刷物にQRコードをつけるだけで、世界中の印刷物をユニバーサル対応させる事も可能になっています。企業や自治体に向けては、弊社がこれらのソリューションを導入する支援を実施して参ります。