現在、農林水産省を中心として「日本食文化の世界遺産化プロジェクト」が立ち上がり、フランス料理、地中海料理、メキシコ料理、韓国宮廷料理に続く世界無形遺産登録を目指しています。
登録提案に際しては、登録すべき日本食文化が文化としてきちんと意識されているかどうか、食文化を世界無形遺産として次の世代に受け継いでいく体制・方法(保護措置)がしっかりと取られているかどうかがユネスコにおいて審査されることになるとのことです。

ユネスコの本部はフランスのパリにあります。
私が90年代にパリに出張した時、JALホテル内の日本料理店でしゃぶしゃぶを食べたことがあります。
そのときの肉の厚みは日本の3倍以上ありましたし、霜降りではなく赤身の肉でした。
これではしゃぶしゃぶではおいしくなくて、少し煮込むほうがよいくらいでした。
日系ホテルの高級日本料理店でこれでしたから他は推して知るべしでした。
その後、菊の井の村田吉弘さんをはじめ多くの方が海外で正当派日本料理を知ってもらおうといろいろ努力してこられてきましたが、いまだパリの8割以上の日本料理店がこれで日本料理と言ってほしくないしろものです。
審査員の日本料理のイメージはパリの日本料理店を思い浮かべないでしょうか?

では、日本食文化が文化としてきちんと意識されているかどうか、次の世界に受け継いでいけるかと言われますが、その定義の日本食とはどこまでが入るのでしょうか?
本格懐石料理は文句なしでしょう。
ですが、その本格懐石料理も日々工夫進化しています。
寿司、さしみ、てんぷら、すきやき、鍋、おでんまでは日本料理としてはOKでしょうが、世界無形遺産に登録される食文化としては大丈夫でしょうか。
日本に来た外国人に何が食べたいですかと聞くと神戸ステーキを希望する人が多いので、和牛ステーキも世界では立派な日本の食文化と思いますが、日本伝統食文化というより創作料理に思われます。
とんかつ、かつ丼、牛丼、うどん、そば、お好み焼き、たこ焼き、串カツ、ラーメンはB級日本料理のジャンルをつくればOKでしょうか?
では、カレーライス、カレーパン、メロンパン、肉まん(大阪では551の豚まん)、ナポリタンスパゲッティはどうでしょうか?
テリヤキバーガーはさすがに日本料理ではないと思いますが、世界の多くの人の意見はどどっちなんでしょうか?
ちなみに今年日本に1ケ月間研修に来た友人の中国人女性に一番おいしかった日本料理は何でしたかと帰国のときに聞いたら「吉野家の牛丼が一番おいしかった」という答えが返ってきました。
高級ふぐ1匹買って「てっちり」「てっさ」をごちそうした私はそのとき失敗したと思い、目が点になったのでした。食はその人の好みに合わせることが一番良いことなのです。
日本食文化も偉い先生が決めるのではなく、ディファクトスタンダードとして世界に認知され周知徹底されることが必要です。
世界では今日もどんどん創作日本料理が広がっていますので、一日も早く外国語で日本料理文化を数多く情報発信してコンセンサスをつくり、正当派日本料理文化を知ってもらわねばなりません。
弊社はそんなお手伝いをさせていただきたいと考えます。